近年、日本ではデジタル化が加速しています。その一環として、住民票を持つ国内全住民に付与されるマイナンバー(個人番号)が記載された顔写真付きICチップ入りの「マイナンバーカード」の普及率は、2024年11月22日時点で75%に達しています。マイナンバーカードは、住民票の取得など様々な用途で活用されていますが、中でもマイナンバーカードのICチップを活用した公的個人認証サービス(JPKI)*は、今後ますます注目を集めるとみられます。JPKIは、本人確認の信頼性を高め、デジタル社会における安心・安全なサービス提供を支える基盤になるでしょう。この記事では、マイナンバーカードの普及状況と、本人確認方法の変遷や犯罪収益移転防止法(犯収法)の本人確認手法であるワ方式・ホ方式の違いなどに焦点を当てて解説します。*公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのことです。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長です。目次マイナンバーカードの所有者は増えているマイナンバーカードの普及は、日本のデジタル社会における重要なマイルストーンとなっています。デジタル庁のデータによれば、2024年11月22日時点でのマイナンバーカード交付率は75%を超え、所有者は年々増加しています。この普及により、各種行政手続きや医療サービス、金融サービスなどにおける本人確認がスムーズに行えるようになっていくでしょう。参考:「マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード」https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/mynumberpenetrationrateマイナンバーカードがここまで普及している要因の一つは、その利便性です。マイナンバーカードは単なるIDカードではなく、行政サービスのデジタル化を促進するための「鍵」ともいえます。例えば、税金のオンライン申告(e-Tax)や、マイナポータルを利用した各種申請手続きが迅速かつ簡単に行えるようになり、国民の行政サービスへのアクセス手段が劇的に改善されています。さらに、2021年10月からは、事前に申請・登録することで、マイナンバーカードを健康保険証としても利用できるようになり、医療機関での受付手続きもスムーズに行えるようになりました。これにより、高額療養費制度の利用が簡便になったり、過去に処方された薬や特定健診などの情報を医師や薬剤師と正確に共有できたりするメリットがあります。従来の保険証を持ち歩く必要もなくなります。▼マイナンバーカードの健康保険証利用についての申請・登録方法はこちらhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html#kokumin1券面の目視で本人確認をする時代は終焉へ前章ではマイナンバーカード普及による市民生活の利便性向上に触れましたが、それを超える大きなインパクトがもたらされるのが、本人確認の世界です。従来の本人確認方法である「目視確認」は終焉を迎えると言っても過言ではありません。これまで、銀行口座の開設や携帯電話などの各種契約時には、対面での書類確認や目視での本人確認が一般的でした。しかし、本人確認書類の券面の偽変造による不正契約が相次いでいることから、2024年6月18日の第39回犯罪対策閣僚会議において、犯罪収益移転防止法(犯収法)と携帯電話不正利用防止法に基づく非対面(オンラインなど)の本人確認の手法を、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)に原則として一本化することが決まりました。また対面での本人確認も、マイナンバーカードや運転免許証などのICチップの読み取りが義務化されることとなりました。身近なところでは携帯電話や電話転送サービスの契約時の本人確認が対象になります。マイナンバーカードを活用したJPKIの導入により、オンラインでの本人確認が確立されつつあります。今後は、さらに多くの業種やサービスでこのデジタル本人確認が主流となり、目視確認は過去のものとなっていくでしょう。▼公的個人認証サービスについてはこちらの記事をご覧ください「公的個人認証サービス(JPKI)とは|マイナンバーカードを活用した本人確認の未来」https://pocketsign.co.jp/blog/3参考:「犯罪対策閣僚会議「国民を詐欺から守るための総合対策」のとりまとめについて」https://www.digital.go.jp/news/f50e8113-9efb-408e-b759-75e337797c66これまで主流だった「ホ方式」と今後主流になる「ワ方式」、そして他方式の違いでは、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく本人確認は、公的個人認証サービス(JPKI)によってどのように変わるのでしょうか。本章では、犯収法施行規則第6条第1項第1号に規定されている本人確認方法の一部について解説します。犯収法とは、犯罪による収益を隠すための資金洗浄(マネーロンダリング)や、テロ資金供与を防止するために定められた日本の法律です。正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(Law for Prevention of Transfer of Criminal Proceeds)で、2008年に施行されました。金融機関や特定業者(宅地建物取引業者、司法書士、保険会社など)は、顧客との取引時に厳格な本人確認手続きを実施する義務があります。これにより、架空名義の口座や契約が犯罪に使われるのを防ぐ狙いがあります。なお、犯収法と携帯電話不正利用防止法の本人確認手法はそれぞれ方式に違いがあるので以下の図をご参照ください。個人向け本人確認手法における犯収法の方式は、以下のようなものが存在します。・ホ方式特定事業者が提供するソフトウェアを用いて、マイナンバーカード等の写真付き本人確認書類の画像とユーザーの顔画像(静止画または動画)を撮影・送信し、照合することで本人確認を行う方法です。ソフトウェアは特定事業者の委託先が開発・提供することも可能です。銀行口座開設など、様々な場面で活用されており、現在最も主流とされています。・ヘ方式ユーザーの顔画像とマイナンバーカードまたは運転免許証のICチップ情報を送信することで本人確認を行う方法です。顔画像の撮影方法はホ方式と同様です。ICチップ情報は、特定事業者提供のソフトウェアを用いずに送信することも可能です。・ト方式大きく分けて2種類あります。ト方式(1)本人確認書類(画像またはICチップ情報)の送信に加え、金融機関などの特定事業者が保有する顧客情報と照合することで本人確認を行います。ユーザーは確認記録上の顧客であることを示す事項(ID・パスワードなど)を申告します。ト方式(2)本人確認書類(画像またはICチップ情報)の送信後、特定事業者から顧客名義口座への振込を行い、ユーザーによる振込確認と、振込金額が記載された預貯金通帳の写し送付によって本人確認を行います。・チ方式本人確認書類(画像またはICチップ情報)の送信に加え、容貌撮影の代わりに転送不要郵便を送付することで本人確認を行う方法です。転送不要郵便とは、住所変更があっても転送されず、元の住所に送付される郵便物で、個人情報漏洩リスクを軽減する目的で利用されます。・ワ方式マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を用いて、公的個人認証のアプリや専用のカードリーダーを通じて本人確認を行う方法です。ユーザーはマイナンバーカードをかざし、暗証番号を入力して認証します。不正利用リスクが低く、高いセキュリティレベルを確保できるため、金融機関などでの口座開設時の本人確認に利用されています。例)「マイナンバーカードを利用した公的個人認証サービス導入の件」(株式会社三井住友銀行様)https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20240207_02.pdfしかし、ワ方式は高いセキュリティレベルを誇る一方、専用のアプリやリーダーが必要となるなど、導入コストや利便性面で課題があります。とはいえ、本人確認書類の偽変造によるなりすましに起因する詐欺犯罪は日を追うごとに巧妙化しています。これを防止するため、ワ方式の普及は社会的要請であり、専用アプリによって普及を後押ししようとしているのが当社の「PocketSign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」やデジタル庁の「デジタル認証アプリ」なのです。現在、犯収法の本人確認で主流となっているのは、「ホ方式(写真付き本人確認書類の画像+ユーザーの顔画像)」ですが、今後は公的個人認証サービスを用いた「ワ方式」が主流になっていくでしょう。ただ、ワ方式は政府による義務化がなくとも普及していくのが必然です。なぜなら、マイナンバーカードをかざして暗証番号を入力するだけで本人確認ができるため、ユーザー体験としても他の方式よりも優れているからです。ホ方式に比べてセキュリティレベルも格段に高く、より安心して利用できる点も、メリットに挙げられます。参考:「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000F5A001/「犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要」https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kakunin-qa/2.pdf「携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認方法の見直しの方向性について」https://www.soumu.go.jp/main_content/000942596.pdf本人確認はまもなくワ方式(JPKI)が主流へ。早期対応がカギ日本国内での公的個人認証サービス(JPKI)の普及が進む中、国際的な取引やサービスにおいてもJPKIが活用される日が到来するのは、そう遠くないかもしれません。そうした進展は、日本の社会・経済システムが国際的に信頼されるデジタルIDシステムへと進化するために必要不可欠です。マイナンバーカードとJPKIの普及は、デジタル社会における本人確認の基盤を劇的に変えていきます。JPKIは、国の課題でもある資金洗浄などの犯罪を減らすことができ、セキュリティと利便性の両面でさらなる進化が見込まれ、私たちの生活を一層安心・安全で便利なものにしてくれるでしょう。民間事業者としては、本人確認の手法の違いを早期に理解し、今後の技術進化に備えることが大事です。JPKIが〈スタンダード〉となる未来は確実です。PocketSign Verifyで低コストにワ方式(JPKI)導入マイナンバーカードの普及が進む中、JPKI(公的個人認証サービス)を活用したワ方式での本人確認は、より確実で高度なセキュリティを求める時代にマッチした「新しい標準」です。当社の「PocketSign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」は、このJPKIを簡単かつ低コストで導入できる画期的なAPIサービスです。PocketSign Verifyの導入により、ユーザー体験が大きく向上し、認証プロセスでの離脱率が劇的に改善されることが期待されます。さらに、電子署名技術を使った認証プロセスは、信頼性の高さが評価されており、コスト削減と効率化も同時に実現しています。事業者の皆様が提供するサービスにおいて、ユーザーが安心して利用できる環境を構築し、JPKIのスタンダード化に向けた先進的な取り組みを実現することが可能です。時代に乗り遅れずに今から未来の本人確認の備えをしていきましょう。▼PocketSign Verifyの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform▼ポケットサインのサービスや取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。https://pocketsign.co.jp▼問い合わせはこちらhttps://pocketsign.co.jp/contact