C2C経済(モノやコトの2次流通)の隆盛に伴い、不正な転売や著しく高額な転売が社会問題となっています。人気のライブや舞台のチケットが実需から乖離した高値で転売され、高額転売の禁止が法制化されたのは記憶に新しいところです。ただ、チケットだけでなく各種トレカなどのほか、地方自治体が無料で配布するマンホールカードまで不正に転売され、本当に欲しいファンたちの手に渡らない事態は後を絶ちません。果ては人気ゲーム機の最新機種についても、メーカーが発売日が決まる前から「転売対策を取る」と早々に明言するに至りました。本記事では、そうした転売を防止する切り札と思われる公的個人認証サービス(JPKI)*を用いた本人確認について解説します。*公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのことです。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長です。目次マンホールカード転売に市側は「対処できぬ」2025年1月30日、一風変わった記事がYahoo! ニュースで話題となりました。次のようなタイトルです。マンホールカード「転売」止まらず、印刷ミスは6万円以上の高値も…自治体が無料配布・1人1枚なのに服を着替えて何度も(https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250130-OYO1T50054/)全国のマンホール蓋がデザインされたマンホールカードは、地域おこしの一環で2010年代半ばから全国の市町村が配布を始めました。国土交通省や業界団体などでつくる下水道広報プラットホーム(GKP)によると、現在では全47都道府県の自治体が発行しており、これまで累計560万枚以上が発行されています。・参考:https://www.gk-p.jp/activity/mc/冒頭のニュース記事は、大阪府柏原市で起きている想定外の事態と職員の悩みを取り上げています。一部引用します。柏原市は昨年5月、バンダイナムコグループと協力し、人気アニメ「機動戦士ガンダム」と市特産のブドウを描いたマンホール蓋を設置。同7月、同じデザインのカード1万枚以上を用意し、「1人1枚」で配布し始めた。配布初日の昼頃にはカードがフリマサイトに出品され、2000円で取引されたケースもあった。出品目的かは不明だが、配布場所には服を着替えて何度も来る人や、たまたま通りかかった人に声をかけて一緒に訪れ、2枚受け取ろうとする人がいたという。担当者は「不正が明らかな場合は断るが、手段が巧妙だと対処できない」と話す。マンホールカードはもともと、「世界に誇れる文化物」(GKP曰く)である日本のマンホール蓋を国民に楽しく伝えるとともに、下水道への理解・関心を深めてもらうためのコミュニケーションツールとして生まれました。少しでも多くの人の手に渡るのが本来の姿のはずが、一部の人の利得に利用される事態は、発行元の自治体としては看過できないでしょう。転売はゲーム機メーカーをも悩ませています。任天堂の古川俊太郎社長は2025年2月4日の決算会見で、同年中に発売する「ニンテンドースイッチ2」の転売対策について「いろいろな準備を進めていく」と述べました。・参考:https://mainichi.jp/articles/20250204/k00/00m/020/334000c・参考:https://jp.ign.com/nintendo-switch-2/78239/news/nintendo-switch-2顧客の発売直後の需要を満たすような数量を供給するのが主な取り組みとなりますが、販売地域の事情に応じて法令の許す範囲での対策も検討しているとのことなので、小売店とともに本人確認や購入制限などに取り組む可能性があります。チケットは高額転売禁止を法制化前章でみた「転売」は、ネットオークションやチケット転売サイトが普及した2016年ころからコンサートなどのチケットをめぐって大きな社会問題になったことは皆さんご存知かと思います。そこで政府は立法化に乗り出し、2019年(令和元年)6月からチケット不正転売禁止法が施行されました。・参考:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkagyosei/ticketresale_ban/index.html同法により、コンサートや舞台、スポーツイベントなどのチケットを、業者や個人が買い占め、インターネット上で定価を大幅に上回る価格で販売する高額転売が禁止されました。従来からダフ屋は各都道府県の条例で取り締まりの対象になっていましたので、いわば“ネット上のダフ屋”行為にも法令の網がかけられたわけです。なおかつ、チケット購入後に急用等で行けなくなった場合には、正規(公式)のリセールサイトで売却することが推奨されています。 出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201904/1.html)また、転売チケットを買う際も正規(公式)のリセールサイト経由での購入が重要です。正規外の転売チケットでは入場を断られる恐れがあるほか、中止・延期の際に補償を受けられなくなるためです。こうした転売の防止・禁止に向けた取り組みは、公費で作成するマンホールカードでいえば、少しでも多くのファン(住民)に公平に配布するという自治体の責務が背景にあり、イベントのチケットは本当に必要とする人に定価で購入してもらわなければ、中長期的に顧客離れにつながるという事業者の危機感に裏打ちされています(転売ヤーがどれだけ高値で売ろうと、興行主の収入は不変)。転売禁止の実効性を高めるポイントは本人確認ここで、転売の抑止の実効性を担保するのが「本人確認」となります。事業者(発行元)は以下のようなフローを正確かつスムーズに確認し運用しなければなりません。チケットを正規ルートで購入したのは誰か会場にチケットを持参した人物は、(1)と同一人物かリセールサイトに出品した人物は、正規ルートで購入していたかこれらのチェックを簡便かつ厳密に実施できるシステムが必要不可欠です。いくら厳密に本人確認ができたとしても、利用者のUI・UXを損なう煩雑な入力や操作が必要だと離脱を招くからです。かといってUI・UXを厳密さよりも優先させるため、券面を細工(偽造・変造)した本人確認書類が通用するようなシステムにしてしまっては、他人になりすまして購入するといった不正を容易に許してしまいます。こうしたトレードオフを解決する本人確認方法が1つだけあります。それが公的個人認証サービス(JPKI)なのです。・JPKIに関する解説はこちら:公的個人認証サービス(JPKI)を支える技術「デジタル署名」と「公開鍵基盤」を徹底解説(マイナ活用.com、2024/10/15公開)事業者が公的個人認証の機能をスマートフォンアプリやWebサービスに組み込むと、利用者は手持ちのスマートフォンにマイナンバーカードをかざし、暗証番号(マイナンバーカード発行時に役所で設定した4桁の数字)を入力するだけで本人確認が完了します。なおかつ、不正はほぼ不可能な仕様になっているのです(事業者が求めるアプリのスマホへのインストールは別途必要)。不正がほぼ不可能な理由は公的個人認証の仕組みにあります。公的個人認証はマイナンバーカード裏面のICチップに搭載された電子証明書を利用することで、利用者が本人であることの確認・認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に保証します。マイナンバーカードのICチップには、オンラインで本人確認をするための様々なアプリケーション機能(AP)が埋め込まれているのですが、そのうちの1つである公的個人認証AP(JPKI-AP)を活用することによって、厳格な本人確認を行うのです(下図)。このICチップは、耐タンパー性を備えています。耐タンパー性とは、ICチップ自身が備える偽造・不正防止策のことで、例えば無理に情報を読み取ろうとすると、ICチップのメモリの内容が自動的に消去されるといった対策が講じられています。・参考:公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン(第1.4版、デジタル庁・総務省)こうしたセキュリティ対策の堅牢さから、政府も私たちの生活の様々な場面で公的個人認証の利活用を促しています。2024年6月、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく非対面(オンラインなど)の本人確認の手法を公的個人認証に原則として一本化することを決めました。対面での本人確認も、マイナンバーカードや運転免許証などのICチップの読み取りを義務化することとしました。・参考:https://www.digital.go.jp/news/f50e8113-9efb-408e-b759-75e337797c66犯収法に規定された取引以外にも、政府はマッチングアプリ事業者に対し、利用者がアカウントを開設する際に公的個人認証を活用することで厳格な本人確認を実施するよう働きかけることを決めています。今後、酒類提供を伴う各種イベント、酒類販売・たばこ販売における年齢確認や、イベントチケットや限定商品の転売防止など、市民生活のあらゆる場面で利活用されると予想されます。PocketSign Verify で低コストにJPKI導入とはいえ、事業者にとっては、自社のアプリやWebサイトを公的個人認証に対応させるには相応の手間とコストがかかります。なおかつ技術面の高度さから自社で対処しようとすれば多大な開発リソースとリードタイムも要します。そこで、容易かつ迅速に公的個人認証を導入できるようにするのが、当社ポケットサインのAPIサービス「PocketSign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」です。PocketSign Verifyは、事業者が公的個人認証を様々なアプリに組み込むためのAPIサービスです。開発者向けプラットフォーム「PocketSign Platform(ポケットサイン・プラットフォーム)」を通して、各事業者がそれぞれの自社アプリでJPKIを導入できるようになります。▼PocketSign Verifyの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#verifyまた、PocketSign Verifyには、Webサービス(Webサイト)に公的個人認証の機能を組み込むための「PocketSign Stamp(ポケットサイン・スタンプ)」というソリューションも用意しています。また、PocketSign Verifyには、Webサービス(Webサイト)に公的個人認証の機能を組み込むための「PocketSign Stamp(ポケットサイン・スタンプ)」というソリューションも用意しています。PocketSign Stampはエンドユーザー(利用者)のための完全なUIを有しているので、自社アプリを持たず、Webサイトでサービスを提供している事業者はPocketSign Stampを活用することで、シームレスに公的個人認証を導入できます。▼PocketSign Stampの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#stampマイナンバーカードのご活用に関する事柄は、ぜひ実績豊富な当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/