マイナンバーカードを運転免許証として利用できる制度が2025年3月24日に始まります。マイナンバーカードと免許証・運転経歴証明書を一体化するもので、免許更新時の講習をオンラインで受けられたり(優良運転者と一般運転者)、本籍や住所が変わったときに警察への届け出が不要になったりといったメリットがあり、一体化させてもマイナンバーカードと従来の免許証の併用が可能となります。制度開始を間近に控える中、本記事で改めて留意点や利点について、マイナンバーカードの特長と併せて解説していきます。目次「マイナ免許証」で何が変わるの?マイナンバーカードと運転免許証の一体化方針は、警察庁が2024年9月に道路交通法施行規則などの改正案をまとめたことで明らかになりました。政府はもともと2024年度中に一体化させることを目指していましたが、2025年3月24日から開始されることとなりました。具体的には、3月24日以降、各地の運転免許センターや一部の警察署で手続きをすることでマイナンバーカードを運転免許証として利用できるようになります。以下が「マイナ免許証」の主なポイントです。免許証のICチップに搭載されている情報をマイナンバーカードのICチップに記録マイナンバーカードの券面に変更は生じないマイナ免許証への移行は任意で、現行の免許証は廃止されない(両方持つことも可能)まず(1)です。マイナンバーカードのICチップの空き領域に運転免許証の情報の一部を記録することで、マイナンバーカードを「マイナ免許証」として利用できるようになります。マイナ免許証に搭載される主な情報は次の通りです。マイナ免許証の番号(免許情報記録番号)*免許の年月日マイナ免許証の有効期間免許の種類免許の条件に係る事項顔写真(モノクロ)* マイナ免許証の番号(免許情報記録番号)と免許証番号は同一ではないこれらの情報は高度な個人情報そのものです。が、マイナンバーカードのICチップは耐タンパー性**を備えているため、偽変造はほぼ不可能とされています。セキュリティレベルは高いといえるでしょう。**耐タンパー性:ICチップ自身が備える偽造・不正防止策のこと。例えば無理に情報を読み取ろうとすると、ICチップのメモリの内容が消去されるといった対策がある(公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン(第1.4版)より)なお、マイナンバーカードのICチップの堅牢性については、2024年10月15日公開の別記事「公的個人認証サービス(JPKI)を支える技術『デジタル署名』と『公開鍵基盤』を徹底解説」で詳しく解説しています。次に(2)です。マイナンバーカードと運転免許証を一体化しても、マイナンバーカードの券面に免許情報(有効期間、免許の種類など)は記載されません。この点は、プライバシー保護の観点で安心材料なのではないでしょうか。このため、マイナ免許証ではICチップを機器で読み取って免許情報を確認することになります。読み取りはスマートフォンアプリ「マイナポータル」や「マイナ免許証読み取りアプリ」で可能となります(運転免許試験場等であらかじめ有効な署名用電子証明書の提出が必要)。なお、マイナ免許証読み取りアプリは、一体化の運用開始日(3月24日)前までにインストールが可能になるとのことです。そして(3)です。マイナ保険証と違い、マイナンバーカードと運転免許証の一体化は任意です。免許証の持ち方は、免許更新時等に以下の3通りから選択できます。従来の免許証のみ保有マイナ免許証のみ保有従来の免許証とマイナ免許証の両方を保有(併用)・参考記事:保険証12月2日廃止、マイナ免許証も来春登場! 要点を徹底解説(マイナ活用.com、2024年10月21日公開記事)自動車を運転する際は、従来の免許証またはマイナ免許証のいずれかを携行すればよいこととされています。一方で、マイナンバーカードとマイナ免許証の有効期間は異なるため、それぞれの更新手続きを確実に行う必要がある点には注意が必要です。・参考:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/r4kaisei_main.html運転経歴証明書も一体化マイナンバーカードと一体化されるのは運転免許証だけではありません。運転経歴証明書も対象となります。運転経歴証明書は、免許証が不要になった人や自主的な返納を希望する人、免許証の更新を受けずに失効した人が受け取ることができます(自主返納後5年以上または免許失効後5年以上が経過している人、交通違反による免許取り消し処分を受けた人等は対象外)。運転免許証と同じ大きさで、公的な身分証明書として生涯使うことができます。警察庁によると、運転経歴証明書が導入された2002年の交付件数は4017件で、失効者に対しても交付するようになった2019年には51万9188件となりました。これをピークに2020年以降は漸減していますが、2023年は29万1071件とそれなりの規模を保っています。・参考:https://www.npa.go.jp/policies/application/licenserenewal/pdf/rdhtransitionr05.pdfこの運転経歴証明書もマイナンバーカードと一体化させることができます。マイナンバーカードのICチップに記録される主な情報は次のとおりです。運転経歴証明書番号免許の年月日経歴情報を記録した日免許の種類顔写真なお、現在は運転経歴証明書の交付を受けていることを証明するシール(運転経歴証明書交付済シール)が導入されており、このシールとマイナンバーカードを同時に提示することで、運転経歴証明書本体がなくても運転経歴証明書が交付済みであることを証明できるようになっています。しかし、運転経歴証明書交付済シールはマイナ免許証制度の開始に伴い、終了する可能性があるとのことです。運転経歴証明書は生涯有効なので、マイナンバーカードと一体化させても免許証のような更新手数料が安くなるメリット(※次章で詳述)はありませんが、一体化させればマイナンバーカードのみ携行すればよくなるという利点は生まれるでしょう。手数料や講習でメリットありマイナ免許証のメリットは多岐にわたります。一つずつ見ていきましょう。警察への記載事項変更届が不要にまず、マイナ免許証のみ保有している人は転居や転出で住所変更があった場合や氏名が変わった場合、自治体に届け出るだけで済みます(現在は警察への免許証記載事項変更届の提出も必要)。警察庁はこれをワンストップサービスと呼んでいます。ワンストップサービスの利用には、マイナ免許証の手続き場所(運転免許試験場など)でマイナンバーカードの有効な署名用電子証明書を提出し、暗証番号(マイナンバーカード発行時に役所で設定した6~16桁の英数字)も必要となります。また、本籍を変更する場合はマイナポータル連携も求められます。更新時講習をオンラインで受講優良運転者と一般運転者は免許更新に際して、運転免許センター等で対面で受講していた更新時講習を、自宅等で任意の時間帯にオンラインで受講することができます。オンライン受講にも、マイナンバーカードの署名用電子証明書と暗証番号が必要となります。なおかつ受講時点で署名用電子証明書および利用者証明用電子証明書が有効期間内であることが求められます。ただし、視力検査と写真撮影は引き続き運転免許センターや警察署で実施することになります。とはいえ、オンライン受講により、更新当日の所要時間が大きく短縮されることは間違いありません。また、講習にかかる手数料がマイナ免許証は現行の免許証よりも安くなります(下表)。区分オンライン講習対面講習優良200円500円一般200円800円違反・初回受講不可1,400円更新時の手数料が安くなる免許証の持ち方によって、更新時に異なる手数料体系が適用されます。マイナ免許証は従来の免許証や両方持つ場合と比較して安くなります。詳しく見ていきましょう。まず、免許を更新するとき以外で保有形態を変更する場合の手数料です。変更後の保有形態免許証マイナ免許証2枚持ち変更前の免許証―1,500円1,500円マイナ免許証2,550円―2,550円3月24日以降にマイナ免許証を保有する場合は1500円かかります。従来の免許証とマイナ免許証の2枚持ちをする場合も同様です。一方、いちどマイナ免許証だけを保有する状態になった後で、普通の免許証(従来の免許証)へ戻すあるいは普通の免許証とマイナ免許証の2枚持ちにするケースでは2550円が必要です。次に免許更新時の手数料です。更新後の保有形態免許証マイナ免許証2枚持ち全ての保有形態2,850円2,100円2,950円従来の免許証からマイナ免許証へ切り替える場合は2100円となり、引き続き普通の免許証として更新する場合よりも750円安くなります。逆に2枚持ちにすると2950円です。普通の免許証にプラス100円でマイナ免許証も保有できるということです。また、更新の際には更新手数料だけでなく講習手数料も必要ですが、前述のとおり優良運転者と一般運転者はオンライン講習を選択することでそれぞれ300円、600円安くなります(前もってマイナ免許証を保有している必要あり)。参考:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/fee.html「マイナ免許証」の留意点は前章まで見てきたとおり、マイナ免許証には多くのメリットがあることが分かります。では、デメリットや注意点はどういったことでしょうか。紛失(遺失)の際は1週間で再発行真っ先に思い浮かぶリスクが紛失でしょう。マイナ免許証を紛失してしまった後、引き続きマイナ免許証の利用を希望する場合は、居住する自治体と警察の両方で手続きが必要です。マイナンバーカードを市区町村で再発行してもらう新しいマイナンバーカードのICチップに免許証の情報を記録(マイナ免許証の再記録)なお、保有形態をマイナ免許証のみにしていた人は、マイナ免許証の再記録または普通の免許証の交付(保有形態をマイナ免許証から普通の免許証に変更)が行われるまでは自動車の運転はできません。こうした不便さを解決するため、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)は2024年12月2日から、マイナンバーカードの紛失・破損等による再発行の申請に対し、原則1週間で自宅へ届く「特急発行・交付制度」を開始しています。・参考:https://www.kojinbango-card.go.jp/apprec/apply/express_apply/この制度は、2024年12月2日をもって健康保険証の新規発行が停止され、保険証の機能がマイナンバーカードへ一体化されたことに伴う措置です。マイナンバーカードの有効期間満了による更新を事由とした通常の発行・交付とは切り分けた対応で、マイナ免許証やマイナ保険証の各制度を担保しているのです。また、再交付の手数料の面でもマイナ保険証は優遇されています。手数料は現在2250円ですが、3月24日以降は下表のようになります。運転免許証を再交付マイナ免許証を再記録再び2枚持ち(再交付・再記録)運転免許証2,600円1,500円2,700円マイナ免許証2,550円1,500円2,650円2枚持ち運転免許証のみ紛失2,600円ー 2,600円マイナ免許証のみ紛失ー 1,500円1,500円従来の免許証を紛失したのを機にマイナ免許証に切り替える場合や、マイナ免許証の再記録を申請する際の手数料は1500円に設定されました。一方、従来の免許証を保有している人が普通の免許証を再交付してもらうには2600円かかることから、現状から350円の値上げとなります。マイナ免許証のみの保有形態の人が普通の免許証の再交付を受けるケースでも2550円かかります。政府と警察庁はマイナ免許証へ政策的に誘導しているといえるでしょう。ただし、これとは別にマイナンバーカードの発行手数料が2000円かかります。とはいえ、マイナ保険証として利用することや、今後さまざまな場面でマイナンバーカードを用いた本人確認が普及していくことを考えると、再発行をためらう余地はないのではないでしょうか。・参考:https://www.police.pref.osaka.lg.jp/kotsu/untenmenkyo/19985.htmlカーシェアでは多くの事業者が未対応また、近年サービスが拡大しているカーシェアリングでは、マイナ免許証に未対応の事業者が多く(※2025年3月10日現在)、カーシェア利用のためには従来の免許証のままあるいは2枚持ち(併用)の保有形態になる必要があります。・参考:3月24日スタートの「マイナ免許証」、各社カーシェアサービスで利用できず 「従来の免許証を発行して」(IT media mobile/2025年3月5日配信)多くのカーシェアサービスは会員登録時にスマホアプリで運転免許証を撮影してアップロードする必要があります。カーシェア事業者側は、それらの画像を目視することで本人確認と免許証の記載事項の確認を行っているわけですが、マイナ免許証は券面に免許情報(有効期間、免許の種類など)が記載されないため、事業者は種々の確認ができないのです。カーシェア大手のうちある1社は「マイナ免許証に対応できるよう準備を進めておりますが、当該免許証に対応するソフトウェアやハードウェアの発売が未定のため、恐縮ながら従来の運転免許証のみの受付とさせていただく予定」と告知しています。また、上記記事によれば、運転免許証のICチップを車の施錠および解錠に利用している事業者もあり、そうしたシステムの改修も必要になりそうだとのことです。いずれにせよ、カーシェアをよく利用する人は事業者の対応状況を注視していくとよいでしょう。カーシェアのマイナ免許証対応もポケットサイン前章でみた通り、カーシェアリングサービスにおいては、マイナンバーカードのICチップから免許情報(有効期間、免許の種類など)を読み取る対応を済ませたアプリ(事業者)でしかマイナ免許証は使えません。一方、マイナンバーカードは今後ますます私たちの日常生活に浸透し、無くてはならないものになっていきます。カーシェア事業者にとってはマイナ免許証への対応が急務であるわけですが、それは容易ではありません。自社のアプリやWebサイトをマイナンバーカードのICチップ読み取りに対応させるには相応の手間とコストがかかるうえ、技術面の高度さから自社で対処しようとすれば多大な開発リソースとリードタイムも要します。そこで、容易かつ迅速にマイナンバーカードのICチップ読み取りを導入できるようにするのが、当社ポケットサインのAPIサービス「PocketSign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」です。PocketSign VerifyはAPIサービスであり、開発者向けプラットフォーム「PocketSign Platform(ポケットサイン・プラットフォーム)」を通して、各事業者がそれぞれの自社アプリで公的個人認証サービス(JPKI)*や券面事項入力補助AP(アプリケーション)を導入できるようになります。*:公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのことです。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長です。▼PocketSign Verifyの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#verifyまた、PocketSign Verifyには、Webサービス(Webサイト)に同様の機能を組み込むための「PocketSign Stamp(ポケットサイン・スタンプ)」というソリューションも用意しています。PocketSign Stampはエンドユーザー(利用者)のための完全なUIを有しているので、自社アプリを持たず、Webサイトでサービスを提供している事業者はPocketSign Stampを活用することで、シームレスに必要な機能を導入できます。▼PocketSign Stampの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#stampなお、こうしたJPKIを他者に提供するには、公的個人認証法に基づき主務大臣の認定を受けて「プラットフォーム事業者」になる必要があります。当社は2023年3月に民間事業者としては16 社目となるプラットフォーム事業者認定を取得しています。マイナンバーカードのご活用に関する事柄は、ぜひ実績豊富な当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/