近年、日本国内でもスーパーアプリが注目を集めています。これまで、決済、交通、ショッピングなどのサービスは、それぞれ異なるアプリやシステムで提供されていました。しかし、これらの機能を一つのプラットフォームに統合するスーパーアプリを導入することで、ユーザーの利便性を大幅に向上させることが可能になります。日本では、LINEやPayPayに加え、Suicaも2028年度の導入を目指してスーパーアプリ化を進めるなど、国内におけるスーパーアプリの展開が加速しています。また、自治体でも、行政手続きや地域サービスを一元化し、住民の利便性を高める「自治体向けスーパーアプリ」の展開が進んでいます。本記事では、スーパーアプリの基本概念や国内外の動向を解説し、自治体向けスーパーアプリのメリットや活用事例を紹介します。スーパーアプリとは?その仕組みと国内外での発展引用:ソフトバンク株式会社 2020年3月期 決算説明会より、令和7年3月7日スーパーアプリとは、一つのアプリ内で決済、交通、ショッピングなど複数の機能を統合し、シームレスに利用できるプラットフォームのことを指します。これにより、ユーザーは複数のアプリを使い分ける必要がなくなり、一つのアプリで生活の多くの要素を完結できるのが特徴です。海外におけるスーパーアプリの発展スーパーアプリの概念は特に中国で発展が進み、その後東南アジアなど他の地域へ広がりました。中国WeChat(微信):メッセージングアプリから発展し、決済、EC、行政サービスまで統合。Alipay(支付宝):決済プラットフォームを基盤に、保険や投資などの。東南アジアGrab(シンガポール発):配車アプリからスタートし、決済、フードデリバリー、金融サービスを統合。Gojek(インドネシア発):バイクタクシー配車を軸に、物流、医療相談、ECへと拡大。日本国内におけるスーパーアプリの動向日本では、海外のような広範なスーパーアプリはまだ一般的ではありませんが、以下の企業がスーパーアプリとしてのサービスを提供しています。LINE:メッセージングアプリとして始まり、LINE Pay(決済※)、LINEショッピング(EC)、LINEミニアプリ(企業サービス)などを統合。PayPay:決済を中心に、EC、投資、クーポン、公共料金支払い などを統合。Suica(JR東日本):2028年度の導入を目指し、決済を軸に交通関連サービスを統合するスーパーアプリ化を検討中。※LINE Payは2025年4月30日をもってサービス終了。ただし、日本では、1つの企業が複数の関連サービスを展開する形が一般的であり、海外のスーパーアプリのように「1つのアプリですべての機能を統合する」ケースは少ないのが現状です。例えば、楽天はEC、決済、金融、旅行など幅広いサービスを提供していますが、それぞれ個別のアプリとして展開されています。一方で、WeChatやGrabは「1つのアプリ内で決済・交通・EC・行政サービスなどを完結させる」仕組みを採用しており、日本のスーパーアプリとは異なる形態をとっています。自治体向けのスーパーアプリとは?自治体向けのスーパーアプリとは、地域イベント情報の発信、ゴミ収集スケジュールの確認、公共施設の予約、防災関連の情報共有など、住民生活に関わるさまざまな機能を1つのアプリに集約して提供できるアプリです。さらに、自治体向けスーパーアプリでは、「ミニアプリ」という仕組みを活用し、住民生活に必要な機能を随時追加できるケースもあります。例えば、防災専用のミニアプリを追加して災害時の情報提供を強化したり、公共施設の予約システムを組み込んだりと、自治体ごとに異なるニーズに応じたカスタマイズが可能です。自治体にとっては、住民への情報提供の効率化や、問い合わせ対応の負担軽減につながる点もメリットとされています。自治体向けスーパーアプリの3つのメリット自治体向けのスーパーアプリは、住民サービスの向上や自治体業務の効率化に貢献するアプリで、主に、住民の利便性向上、自治体の業務負担軽減、地域経済の活性化の3点でメリットがあります。以下、それぞれのメリットについて解説します。住民の利便性向上(地域情報の一元化)自治体向けスーパーアプリは、住民が必要な情報を1つのアプリでまとめて確認できる点が大きな利点となります。例えば、防災情報の通知、ゴミ収集スケジュールの確認、公共施設の予約、地域イベント情報の発信など、これまで異なるサイトや窓口を利用しなければならなかった情報を一元化できます。また、手続きが担当課ごとに異なることで住民が混乱するという課題も解決できます。従来は、「どの窓口で手続きすればよいのか分からない」「必要な情報が分散していて探しづらい」といった状況が発生することもありました。しかし、スーパーアプリを活用することで、住民は必要な情報を探す手間が減り、よりスムーズに行政サービスを利用できるようになります。業務負担の軽減(システム統合による効率化)自治体向けスーパーアプリを導入することで、自治体側は住民からの問い合わせ対応や情報提供業務の負担が軽減されます。従来、自治体は電話対応や窓口業務を通じて住民に情報を提供していましたが、スーパーアプリを活用することで、よくある質問や行政サービスの案内をアプリ内で提供できるようになります。また、防災情報の発信、公共施設の予約システム、地域ポイントサービスなど、複数のシステムをアプリに統合することで、自治体の業務を効率化できます。例えば、ゴミ収集日の自動通知、イベント予約のオンライン化、防災情報の即時配信などをアプリに統合することで、住民からの問い合わせを削減し、職員の負担を軽減できます。地域経済の活性化(キャッシュレス決済・地域ポイントの導入)自治体向けスーパーアプリには、キャッシュレス決済や地域ポイントの導入機能があり、地域の商店や公共施設での利用を促進できます。例えば、地元商店で利用できるデジタル地域通貨やポイント制度を提供することで、住民の消費を活性化し、地域内の経済循環を強化できます。また、自治体が主催するイベントやキャンペーンと連携し、ポイント付与を通じて特定の店舗やサービスの利用を促す施策も可能です。スーパーアプリを活用することで、行政サービスの提供だけでなく、地域の商業活動と連携し、地域全体の活性化を図ることができます。自治体向けスーパーアプリの導入事例7選ここからは、具体的な自治体向けスーパーアプリの導入事例を紹介します。宮城県|防災DXと地域ポイントを活用したスーパーアプリ宮城県は、弊社が提供する「ポケットサイン」というスーパーアプリを活用し、その中の「防災」や「地域ポイント」「アンケート」「お知らせ」「健康ウォーク」「フードロスクーポン」などさまざまな機能を導入しています。また、ポケットサインはマイナンバーカードを登録してもらったうえで利用してもらうので、本人確認が必要な行政サービスをオンラインでスムーズに利用できる環境を提供しています。これにより、住民は従来の窓口対応や紙ベースの手続きを省略し、より簡単かつ安全に自治体サービスを受けられるようになります。主な機能:防災機能:マイナンバーカードと連携した避難所の入退所管理をデジタル化し、自治体が住民の避難状況をリアルタイムで把握できる仕組みを整備。これにより、迅速な避難支援が可能になります。また、Lアラート(災害情報共有システム)と連携し、災害情報を住民にプッシュ通知で配信することで、情報の伝達精度が向上。地域ポイント:地域経済の活性化を目的に、宮城県公式の「みやぎポイント(みやポ)」をアプリ内に統合。住民はスーパーやドラッグストアなど約1000店舗でポイントを利用できるため、日常生活の中でアプリを活用しながら防災意識を高める「フェーズフリー」の考え方を実現。ポケットサインは、複数の自治体で導入が進んでおり、その信頼性と実用性が評価され、デジタル庁が策定した「デジタル地方創生モデル仕様書」に準拠しているほか、デジタル庁が公開する「デジタル地方創生サービスカタログ(2024年冬版)」や「デジタルマーケットプレイス(DMP)」にも掲載されています。また、「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)※」に採択された実績もあり、自治体のデジタル化推進に貢献するプラットフォームとして国からも評価されています。 ※「デジタル田園都市国家構想交付金」は「新しい地方経済・生活環境創生交付金」に変更熊本県熊本市|くまもとアプリ宮城県と同様に、熊本市もポケットサインのスーパーアプリを活用しています。熊本市はポケットサインのアプリを基盤としたOEMとして『くまもとアプリ』を導入しており、市民の利便性向上と行政サービスの効率化を実現しています。このアプリは、マイナンバーカードとの連携により、スムーズなサービス利用を可能にし、日常生活におけるサービスの利便性向上や、災害時の支援、ボランティア活動の促進、地域サービスのデジタル化を推進しています。また、メールアドレスでの登録にも対応し、市民以外のボランティアも利用できる仕組みを整えています。特にボランティア活動は、活動実績の記録やポイント制度との連携により、市内外の多くの人に活用されています。主な機能:避難所受付のデジタル化:避難所でQRコードを読み取り、アンケートに回答することで、迅速な受付が可能に。避難状況の記録・共有:市民が避難状況をアプリに登録でき、熊本市が情報を一元管理し、より的確な支援を提供。ボランティア活動の情報提供:地域の活動やボランティア情報の検索・参加申込が可能。活動実績がアプリに記録される。ポイント制度:ボランティアや地域活動の参加でポイントが付与され、抽選への参加や2025年度以降は協賛店舗でのクーポン交換が可能に。参考:・くまもとアプリ|熊本県熊本市・デジタル庁ニュース|平時と災害時に「くまもとアプリ」 熊本市が目指す365日の地域防災東京都|東京都公式アプリ東京都は、都民向けのデジタルサービスを統合した公式アプリ「東京アプリ」を2025年2月17日にリリースしました。このアプリは、行政サービスの利便性向上や都民の活動促進を目的に設計されており、今後の機能拡充も予定されています。主な機能:東京ポイントの取得: 社会的意義のある活動に参加し、アプリ内で二次元コードを読み取ることでポイントを獲得できる仕組み。ポイントの利用: 獲得した東京ポイントは、au PAYやdポイントなどの民間決済サービスのポイントや、都立施設の入場チケットと交換可能。将来的な機能拡充: 今後、段階的に行政手続きやサービスの利用申請が可能となる機能を追加し、都民の利便性向上を目的とした拡充を進める予定。「東京アプリ」は、住民向けサービスの利便性向上や、行政のデジタル化推進を目的としたスーパーアプリの一例 です。今後、さらなる機能拡充により、都民の日常生活の利便性向上や、東京都全体のデジタル行政の発展に貢献するアプリへと進化していくことが期待されます。参考:東京都公式アプリ(東京アプリ)佐賀県佐賀市|佐賀市公式スーパーアプリ佐賀市は、株式会社オプティムが提供するスーパーアプリを導入し、行政サービスの利便性を向上させています。住民が日常生活で活用できる多彩な機能を備えており、アプリを通じて行政とのスムーズな連携が可能です。主な機能:ゴミ収集日のプッシュ通知:指定されたゴミ収集日を通知でお知らせ。図書館利用カードのデジタル化:貸出状況の確認や予約が可能。防災情報の提供:災害時に最新情報を迅速に受信可能。地域マップ・掲示板:地域の情報共有やコミュニケーションを促進。デジタル市民証:マイナンバーカードの電子証明書を活用した市民証明機能このアプリは佐賀市民以外でも利用可能で、ダウンロード後の地区選択で「市外在住」を選ぶことで利用できます。さらに、カード表示やミニアプリの並べ替え、デジタル市民証の画像カスタマイズなど、使いやすさを向上させる機能も充実。佐賀市は住民の声を反映しながら、生活をより便利で快適にするための機能を継続的に拡充しています。参考:・佐賀市公式スーパーアプリ!・自治体公式スーパーアプリ | OPTiM岡山県真庭市|真庭市公式スーパーアプリ「まにあぷり」真庭市のスーパーアプリ「まにあぷり」は、地域通貨「まにこいん」の新機能として提供され、決済機能だけでなく、防災情報、暮らしの情報、子育て情報、ヘルスケア機能など、地域住民の生活をサポートする多彩な機能を備えています。主な機能:防災情報:災害時に役立つ情報を提供し、住民の安全をサポート。暮らしの情報:地域のイベントやお知らせなど、日々の生活に役立つ情報を配信。子育て情報:子育て世代に向けたサポート情報やイベント情報を提供。ヘルスケア機能:「まにこいん健幸ポイント」として、日々の歩数を記録し、健康維持・増進を促進。「まにあぷり」は、地域をつなぐ市民参加型のスーパーアプリとして、真庭市民の生活をより便利で豊かにすることを目指しています。参考:・真庭市のスーパーアプリ「まにあぷり」・デジタル地域通貨「まにこいん」がスーパーアプリ化 デジタル市民証搭載「まにあぷり」提供開始 | 株式会社アイリッジのプレスリリース埼玉県飯能市|飯能市ご当地アプリ飯能市は、住民や訪問者向けに行政サービスや地域情報を一元化する「飯能市ご当地アプリ」を提供しています。このアプリは、市民の利便性向上と行政サービスのデジタル化を目的とし、オンライン手続きの利便性向上や情報発信の強化を図っています。主な機能:電子申請:各種行政手続きや施設利用の予約をスマートフォンから簡単に行うことが可能。イベント情報の提供:市内で開催されるイベント情報を収集し、住民や観光客がアクセスしやすい形で提供。ごみカレンダー:収集コースごとのごみ収集日を表示し、通知機能でリマインドすることが可能。安全・安心情報:救急・医療機関情報、AED設置場所、防災・防犯情報など、災害時や緊急時に役立つ情報を提供。飯能を歩こう(ハイキング・ウォーキング・サイクリングコース紹介):自然豊かな飯能市の魅力を活かしたおすすめの散策ルートを紹介し、観光促進に貢献。参考:・飯能市ご当地アプリ・埼玉県 飯能市ご当地アプリ - 【公式】ModuleApps 2.0埼玉県さいたま市|さいたま市みんなのアプリさいたま市では、地域商社である株式会社つなぐが運営する「さいたま市みんなのアプリ」を提供しています。主な機能:デジタル地域通貨「さいコイン」とポイントサービス「たまポン」:市内の加盟店で利用可能な電子マネー「さいコイン」と、チャージや買い物で貯まるポイント「たまポン」を提供。行政サービスとの連携:図書館利用者カードのデジタル化や医療機関の検索、ごみ出し情報の確認、防災情報の受信など、日常生活に役立つ行政サービスと連携。民間サービスとの連携:加盟店の検索やクーポン配信、ポイント抽選、アンケート機能など、地域の商店やサービスとの連携を強化し、ユーザーの満足度向上を図る。このアプリは、さいたま市内在住者だけでなく、市外の方も利用可能で、地域経済の活性化と市民の利便性向上を目指しています。また、デジタル地域通貨の加盟店は約1,450店舗に拡大し、チャージ可能な金融機関も増加しています。さらに、2024年12月には「送る・受け取る」機能が追加され、ユーザー間での「さいコイン」や「たまポン」の送受信が可能となりました。 これらの取り組みにより、「さいたま市みんなのアプリ」は地域のスーパーアプリとして、行政と民間のサービスを統合し、市民の暮らしをより便利で豊かにすることを目指しています。参考:・さいたま市みんなのアプリ・「さいたま市みんなのアプリ」リリースのお知らせ | フェリカポケットマーケティング株式会社のプレスリリーススーパーアプリを活用するなら「ポケットサイン」ポケットサイン株式会社は、マイナンバーカードの普及促進と活用拡大に加え、自治体向けのスーパーアプリとして「ポケットサイン」を提供しています。 「ポケットサイン」は、防災や地域ポイント、お知らせ機能など、複数の行政・地域サービスをひとつに集約できるスーパーアプリでありながら、他社が「ポケットサイン」上にミニアプリを構築・連携できる仕組み「PocketSign LINK」も整備しています。これにより、ID連携を通じてサービス間をスムーズに行き来でき、たとえば健康ウォークの歩数に応じてポイントを付与するといった機能も実現可能となり、単なるスーパーアプリにとどまらず、住民の利便性向上や地域活性化を支えるプラットフォームとしても幅広く活用されています。以下ページより、導入事例やサービス概要をまとめた「ポケットサイン」サービス資料をダウンロードいただけますので、スーパーアプリや地域DXにご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。▼自治体向け「ポケットサイン」資料ダウンロードhttps://pocketsign.co.jp/contact/download/government▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/