「もっと効率的にソフトウェアを調達したい」「最新のデジタル技術を住民サービスに活かしたい」「調達コストを抑えたい」こうした課題を抱える自治体にとって、デジタルマーケットプレイス(DMP)は大きな可能性を秘めた新たな選択肢となりつつあります。本記事では、デジタル庁が推進する「デジタルマーケットプレイス(DMP)」について、地方自治体の職員の皆さま向けに、仕組みの概要からメリット、実際の使い方、利用時の注意点までをわかりやすく解説します。DMPを活用することで、どのように調達業務が変わり、DX推進につながるのか。そのヒントを得ていただければ幸いです。※本記事は、2025年4月8日時点で公開されている官公庁の情報を基に作成しています。本記事の最下部に参考情報をまとめてますので、最新の情報はデジタル庁公式サイト等でご確認ください。目次デジタルマーケットプレイス(DMP)とは?概要と目的近年、行政サービスのデジタル化が進む中、自治体におけるソフトウェア、特にクラウドサービス(SaaS)の調達ニーズが高まっています。しかし、従来の公共調達プロセスでは、「時間や手間がかかる」「最適なサービスを見つけにくい」といった課題がありました。こうした背景を踏まえ、これらの課題解決を目指してデジタル庁が構築したのが「デジタルマーケットプレイス(以下、DMP)」です。DMPは、国や地方自治体などの行政機関が、クラウドソフトウェア(SaaS)を中心としたITサービスを、オンライン上で迅速かつ透明性の高い方法で調達できるよう支援するプラットフォームです。具体的には、以下のような目的を持っています。DMPの主な目的は以下の通りです。調達の迅速化:クラウドソフトウェア(SaaS)の調達プロセスをスピードアップする。ベンダーの多様化:中小企業やスタートアップを含む多様なベンダーの参入を促進し、調達先の選択肢を増やす。透明性の向上: 調達プロセスにおける情報の非対称性を解消し、より透明で公正な市場を形成する。参考:デジタルマーケットプレイスの概要と取組状況についてこれは、政府が推進する「クラウド・バイ・デフォルト原則」(政府情報システムはクラウドサービスの利用を第一候補とする考え方)とも連携する取り組みです。DMPの仕組み:どうやってSaaSを調達するの?DMPは、オンラインの「カタログサイト」として機能します。ベンダー(サービス提供事業者): 自社のSaaSや関連サービスをDMPに登録します。サービスの機能、価格、セキュリティ情報などを公開します。行政機関(地方自治体など): DMPのソフトウェア検索ページから情報を検索し、自らのニーズに合ったサービスを探します。比較・検討: 複数のサービスの仕様や価格をオンラインで比較検討できます。契約: 最適なサービスが見つかったら、自治体はサービス提供事業者と直接、個別契約を結びます。デジタル庁はプラットフォームの運営と、ベンダーとデジタル庁間の基本契約(参加条件などを定めたもの)を担当します。実際のサービス利用に関する契約は、各自治体とベンダー間で締結される点がポイントです。従来の公共調達プロセスとの違いは?従来の調達では、自治体ごとに仕様を作成し、入札公告を行い、提案を評価して事業者を選定するというプロセスが一般的でした。これには多くの時間と労力がかかり、新規事業者の参入障壁も高いという課題がありました。DMPと従来の調達に関する違いは以下です。特徴 / 側面デジタルマーケットプレイス(DMP)従来の調達調達速度短縮(数週間単位も可能に)長い(数ヶ月単位も)透明性高い(カタログで情報公開)限定的、情報の非対称性ありベンダー多様性多様(中小・スタートアップも参入)限定的、大手中心になりがち事務負担軽減(カタログ検索・比較中心)大きい(仕様作成、入札評価等)主な対象クラウドソフトウェア(SaaS)カスタム開発、パッケージソフト、クラウドソフトウェア(SaaS)このように、DMPは特にSaaSの調達において、スピード、透明性、選択肢の多様性、事務負担の軽減といった面で大きな変革をもたらします。自治体職員がDMPを活用するメリットDMPの導入は、日々の業務に追われる自治体職員の皆さんにとって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? 主な3つのメリットを詳しく見ていきましょう。メリット1:調達業務の劇的な効率化とスピードアップこれまでSaaS導入を検討する際、インターネットで情報を検索したり、他の自治体にヒアリングしたり、複数のベンダーに個別に問い合わせたりと、情報収集だけでも大変な手間がかかっていました。DMPを活用すれば、プラットフォーム上で多様なSaaSの情報を効率的に収集し、仕様や価格を横並びで比較検討できます。複数の絞り込み条件を使えば、目的のサービスを素早く見つけることも可能です。これにより、調達にかかる時間と労力が大幅に削減され、企画立案や予算要求といった初期段階の業務もスムーズに進められるようになります 。結果として、職員は他の重要な業務により多くの時間を割くことができるようになります。メリット2:コスト削減の実現可能性引用:デジタルマーケットプレイス(DMP) 行政機関向け説明会より行政利用者は、DMPにログインすることで、掲載されているサービスのプラン詳細を確認できます。そのため、予算策定や概算見積もりの作成にかかる手間を削減できます(詳細見積もりについては、DMPから追加で問い合わせることも可能です)。また、DMPには多様なベンダーが参加しており、プラットフォーム上で健全な競争が促されることにより、より競争力のある価格でサービスを調達できる可能性が高まります。さらに、調達プロセスの迅速化により、導入の遅れによる機会損失や追加コストの発生を防ぐ効果も期待できます。メリット3:イノベーションの促進と選択肢の拡大DMPは、中小企業やスタートアップといった、これまで公共調達への参入が難しかった事業者にも門戸を開きます。これにより、大手ベンダーだけでなく、特定の分野に強みを持つ企業や、新しい発想を持つ企業の革新的なSaaSも、自治体の選択肢に入ってきます。最新のクラウド技術やニッチなニーズに応えるソリューションに触れる機会が増え、自治体内部の業務改善や、新たな住民向けサービスの創出といったイノベーションを促進する効果が期待できます。DMPで探せるデジタルサービス:対象範囲と具体例DMPでは、どのような種類のデジタルサービスを探すことができるのでしょうか?DMPで調達できるサービスの種類DMPが主に対象としているのは、クラウドソフトウェア(SaaS)とその関連サービス(導入支援など)です。一方で、以下のようなものは基本的にDMPの直接的な対象外となります。IaaS(Infrastructure as a Service)/ PaaS(Platform as a Service): これらは主に「ガバメントクラウド」の枠組みで扱われます。個別開発(スクラッチ開発)のソフトウェア: DMPは既製のサービスをカタログから選ぶ形式が基本です。ただし、特定のSaaSツールを利用するためのライセンスなどはDMPで調達可能です。DMPにはどんな分野のサービスがある?主要タグ紹介デジタルマーケットプレイス(DMP)に登録されるサービスは、自治体の課題や導入目的に応じて、以下のようなタグで分類されています。■ 目的タグ(最大3つまで選択可)中央省庁や地方自治体の内部組織(部・局)単位で整理された大分類です。行政機関の担当部署が該当するタグを選び、ソフトウェアを絞り込むことができます。例:「窓口対応」「防災」「医療」「教育」「福祉」「農林水産」「観光」など全21種の業務区分で、自治体のあらゆる部門をカバーしています。■ 機能タグ(最大5つまで選択可)ソフトウェア導入によって実現できる機能や成果を示すタグです。例:「セキュリティ」「人事・給与」「資産・設備等管理」「業務効率化」など11の大分類カテゴリのもと、2025年4月16日時点で全部で43種類の機能タグがあります。このようなタグ分類により、自治体は自らの業務課題や政策目標に沿って、DMP上のソリューションを効率的に検索・比較・導入することができます。DMP実践ガイド:登録から契約までのステップそれでは、実際に自治体職員がDMPを利用する際の具体的なステップを紹介します。ステップ1:利用開始前の準備とアカウント登録DMPのカタログサイトでサービスを検索・比較・検討し、調達機能を利用するためには、行政機関ユーザーとしてのアカウント登録が必要です。対象者:国の行政機関、地方公共団体等の職員必要なもの:原則として、自治体などの公的機関のドメイン(例:@city.lg.jp)のメールアドレス登録の流れ:1. DMPのログインページより「行政の方」向けの仮登録を実施(メールアドレス・仮パスワードを入力)引用:デジタルマーケットプレイス|操作ガイドブック(行政向け)より2. 確認メールに記載されたコードを入力し、仮登録を完了3. 氏名・部署名・電話番号を入力し、本登録4. 利用規約に同意して登録完了※詳細はDMP公式サイトに掲載されている「操作ガイドブック(行政向け)」をご確認ください。ステップ2:目的のSaaSを効率的に検索・比較アカウント登録を終えたら、いよいよDMPにログインし、数多くのサービスの中から自団体に合ったSaaSを探す工程に入ります。DMPには行政の現場での“あるある課題”に応じて、条件を絞り込むための機能が備わっています。引用:デジタルマーケットプレイス|操作ガイドブック(行政向け)より主な検索機能:キーワード検索目的タグ/機能タグによる絞り込み(例:「窓口対応」「セキュリティ診断」など)対応OS、セキュリティ認証、ライセンス価格などの詳細フィルター比較機能: 複数のソフトを一覧形式で比較可能検索条件や結果を保存して、チーム内で共有可能PDF形式で出力し、調達資料や内部稟議用に活用可能結果の活用: 検索結果や比較結果は、PDFなどでエクスポートし、内部での検討資料や調達手続きの記録として活用可能。補足:調達モードON/OFFとは?引用:デジタルマーケットプレイス|操作ガイドブック(行政向け)より DMPには「調達モード」という切替機能があります。ONにすると、特定のベンダー名や製品名を使った検索が制限され、調達における公平性が保たれます。OFFの状態では、自由な検索が可能で、技術調査・初期検討フェーズに適しています。モードの切替により使える検索項目が一部変化するため、フェーズに応じて適切に選択しましょう。ステップ3:調達プロセスの進め方と契約DMPで適切なサービス候補が見つかったら、実際の調達プロセスに進みます。調達仕様の明確化: 自治体内部で、必要な機能や性能、セキュリティ要件などをまとめた「調達仕様チェックシート」等を作成します(様式は任意または指定の場合あり)。これは、後でDMPの検索結果と比較検討する際の基準となります。DMP検索結果との照合: 作成した調達仕様と、DMPで検索・比較したサービス情報を照らし合わせます 。契約方法の判断:随意契約: 調達仕様を満たすサービスがDMP上で1つしか見つからない場合などは、地方自治法施行令に基づき随意契約が可能となる場合があります 。指名競争入札など: 仕様を満たすサービスが複数見つかった場合は、それらの事業者間で指名競争入札等を行うことが考えられます 。個別契約の締結: 契約方法を決定した後、選定したサービス提供事業者と自治体が直接、個別契約を締結します 。この際、サービス提供事業者が定める利用規約も契約の一部となります 。※注意: DMPはあくまで調達を支援するプラットフォームであり、実際の調達手続き(契約方法の判断や契約締結)は、地方自治法や地方自治法施行令、各自治体の契約規則等に則って適切に行う必要があります。DMP利用にあたっての重要事項・留意点DMPを効果的かつ適正に利用するために、以下の点に留意しましょう。内部ルールの整備: DMPを活用した調達プロセス(特に随意契約や指名競争入札の判断基準など)について、庁内のガイドラインやルールを整備しておくことが望ましいです 。要件定義の徹底: 「調達仕様チェックシート」等を用いて、調達したいサービスの要件を明確に定義することが、最適なサービス選定の鍵となります 。最新情報の確認: DMPに掲載されているサービス情報は更新される可能性があるため、常にこちらから最新のソフトウェア情報を確認することが重要です 。セキュリティ要件の確認: 調達するサービスが、自治体の情報セキュリティポリシーや関連ガイドライン(総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」など)の要件を満たしているかを必ず確認してください。契約内容の精査: ベンダーが提示する利用規約や個別契約の内容を十分に確認し、不明な点は契約前に解消しておきましょう 。DMPは調達を効率化しますが、最終的なサービスの選定責任や契約に関する責任は自治体にあります。プラットフォームの利便性を活かしつつ、慎重な判断が必要です。セキュリティは大丈夫?DMPの信頼性と安全対策クラウドサービスを利用する上で、セキュリティは最も重要な懸念事項の一つです。デジタル庁は、DMPに登録されるサービスやベンダーに対して、一定のチェックを行っています。登録情報の確認: ベンダーが登録申請時に提出するサービス情報(機能、セキュリティ対策、利用規約、プライバシーポリシー等)をデジタル庁が確認しています。セキュリティ認証の確認: 申請サービスが取得しているセキュリティに関する認証(ISMAP/ISMAP-LIUなど)の有効性を確認します 。特に、国の行政機関が機密性の高い情報(機密性レベル2以上)を取り扱うソフトウェアについては、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)またはISMAP-LIU(ISMAP for Low-Impact Use)への登録が原則として求められます 。地方自治体においても、取り扱う情報の重要度に応じてISMAP登録状況を確認することが推奨されます。追加スクリーニング: ISMAP等に登録されていないサービスについても、デジタル庁が必要に応じて下請け業者の情報やデータ保管場所などの確認を行う場合があります 。これらのチェックにより、一定の信頼性が担保されたサービスがDMPに掲載されるようになっています。引用:デジタル庁, デジタルマーケットプレイス(DMP) 事業者向け説明会よりデジタルマーケットプレイス(DMP)を活用して、自治体DXを加速しようデジタルマーケットプレイス(DMP)は、自治体のITサービス、特にSaaSの調達方法を大きく変える可能性を秘めた、画期的なプラットフォームです。DMPを最大限に活用するためには、まずその仕組みとメリットを正しく理解し、庁内で利用ルールなどを整備することが重要です。そして、積極的にプラットフォームを活用し、試していくことが、貴庁のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる一歩となるでしょう。まずはDMP公式サイトにアクセスし、どのようなサービスが登録されているかを確認してみてはいかがでしょうか。DMPでポケットサインの導入もスムーズにこの記事で解説したデジタルマーケットプレイス(DMP)には、弊社ポケットサイン株式会社が提供する「ポケットサイン防災」などのサービスが登録されています。「ポケットサイン防災」は、弊社が提供するスーパーアプリ「ポケットサイン」上で提供されるミニアプリの一つです。「ポケットサイン」は、防災のほか、地域振興、健康促進など、多様な住民サービスを一つのアプリに統合し、住民の利便性向上と自治体の業務効率化を支援します。DMPをご利用いただくことで、登録されている弊社サービスについて、その機能、参考価格、セキュリティ情報(ISMAP-LIU登録状況など)をオンラインで容易に比較検討でき、情報収集から調達までのプロセスを大幅に効率化できます。貴庁のDX推進と住民サービス向上のために、ぜひDMPを活用した導入をご検討ください。「ポケットサイン」全体の詳細や他の機能に関して、ぜひポケットサインにご相談ください。▼「ポケットサイン防災」DMP掲載ページはこちら https://www.dmp-official.digital.go.jp/software/?id=161▼ポケットサイン サービス概要資料(無料ダウンロード) https://pocketsign.co.jp/contact/download/government▼導入に関するご相談・お問い合わせはこちら https://pocketsign.co.jp/contact参考情報・リンク集デジタル庁 DMP公式サイト: https://www.dmp-official.digital.go.jp/ DMP 行政機関向けご利用ガイド: https://www.dmp-official.digital.go.jp/userguide/government/ デジタル庁 Note (DMP正式版案内 - 地方公共団体向け): https://digital-gov.note.jp/n/n96e4e29abb6d DMP よくある質問 (FAQ): https://www.dmp-official.digital.go.jp/faq/ DMP お問い合わせフォーム: https://www.dmp-official.digital.go.jp/inquiry/