少子高齢化が進んで「多死社会」を迎える我が国では今後、相続も比例して増えていきます。相続で重要になるのが故人の資産の捕捉。金融資産や不動産などを把握しなければ遺産分割も相続税の申告もままなりません。そこで活躍しそうなのが、国民一人ひとりに固有の番号(個人番号 = マイナンバー)を割り当てているマイナンバー制度です。全ての預貯金口座にマイナンバーをひも付けやすくする仕組みが始まり、2026年には所有不動産を一括照会できる制度が開始予定です。本記事でマイナンバーとマネーの手続きについてまとめました。目次ひも付けが劇的にラクになる預貯金口座管理制度まず、2025年4月から預貯金口座管理制度(預貯金口座付番制度)が始まりました。この制度により、預貯金口座とマイナンバーのひも付けがかなり容易になります。従来は、個人が持っている全口座にマイナンバーをひも付けたい場合、金融機関ごとに個別の手続きが必要でした。これは非常に面倒な作業です。これに対し、預貯金口座管理制度では、いずれか1つの金融機関においてマイナンバーでの口座管理を申請すると、他の金融機関の口座にもマイナンバーをひも付けられるようになったのです。具体的には次のような仕組みです。利用者が金融機関の窓口*またはマイナポータルでマイナンバーでの口座管理を申請(*口座を持つ金融機関のうちの任意の1つの金融機関)申し出を受けた金融機関は普通預金や定期預金を含め、自機関に開設されているその利用者名義の全口座をマイナンバーにひも付ける利用者が他の銀行の口座へのひも付けも希望すれば、申し出を受けた金融機関はその利用者の情報を預金保険機構に通知預金保険機構は原則として全ての金融機関にその利用者の口座の有無を照会し、該当する金融機関に利用者のマイナンバーを提供こうした連携によって、利用者の全ての預貯金口座にマイナンバーがひも付けられるというわけです。利用者は申請に当たり、マイナンバーと本人特定事項(氏名・住所・生年月日)を金融機関に提供します。そして、口座とのひも付けには、マイナンバーで管理されている氏名・住所・生年月日の情報と金融機関に提供した本人特定事項とが一致している必要があります。なお、マイナンバーカードを保有していれば、金融機関の窓口に足を運ばずとも、マイナポータルから申請することが可能です。ここでもマイナンバーカードが役に立つわけです。相続人は相続開始(被相続人=故人=の死亡)の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。そして相続人が複数いる場合、預貯金のような分割可能な金銭債権は相続人それぞれの法定相続分に応じて分割承継されます(ですので、法定相続分と異なる相続を行うために遺言や遺産分割協議があるのです)。なおかつ相続放棄や限定承認は相続開始を知った時から3カ月以内にしなければならず、相続税の申告は10カ月以内にする必要があります。被相続人の全ての預貯金口座を遅滞なく把握することは大変重要であり、マイナンバーを活用した預貯金口座管理制度のメリットは大変大きいと言えます。※遺言書で財産の全容が明確にされるケースは少なく、相続人が心当たりのある金融機関に1件ずつ問い合わせて口座の有無を確認し、口座が見つかれば相続開始時の残高証明書などを請求する必要があり、大変な手間と時間がかかります。全ての口座を網羅できているかどうかの不安も伴うでしょう。ただ、預貯金口座のマイナンバーひも付けを申請できるのは原則として口座の名義人に限られます。近い将来の相続に備えるためには、被相続人となる口座名義人が自身で手続きを済ませておく必要があることに注意が必要です。罹災時のキャッシュカード紛失時も安心この預貯金口座管理制度の利点は他にもあります。代表的なのが大災害の被害に遭ったときでしょう。地震や土砂災害などが発生した場合、被災してキャッシュカードを紛失したり、避難する際にキャッシュカードを携行できず、避難所から自宅へ戻れなくなったりするケースが想定されます。このような場合でも、マイナンバーと全口座とをひも付けていると、キャッシュカードや通帳がなくても避難先の近くにある任意の金融機関で、自身の口座情報を確認し、生活資金(現金)を引き出すことができます。従来は、キャッシュカードまたは通帳・印鑑がないと引き出しはできませんでしたので、別の金融機関で現金を下ろせるのは大きなメリットとなるでしょう。(↑複数の金融機関を利用することは珍しくない)・参考:口座管理法制度って知っていますか?(デジタル庁パンフレット)ただ、引き出しにはマイナンバーと本人特定事項(氏名・住所・生年月日)を確認できる書類が必要とされています(よくある質問:預貯金口座付番制度について(デジタル庁)のQ9-21)。「マイナンバーと本人特定事項を確認できる書類」とは、つまりマイナンバーカードのことです。マイナンバーカードを避難時に忘れずに携行することが肝要となります。なお、マイナンバーを口座にひも付けたからといって、金融機関から国へ預貯金残高などの情報が伝わることはありません。従来より、国や地方自治体が預貯金者の口座情報を確認できるのは、法令に基づく場合に限定されており(社会保障の資力調査、税務調査など)、行政機関が自由に残高を照会できるわけではありません。・参考:よくある質問:預貯金口座付番制度について(デジタル庁)のQ9-6また、前述の預貯金口座管理制度とは別に、「公金受取口座」をマイナンバーとともに国に登録しておくと、給付金などの公金をスムーズに受け取ることができます。不動産も所有者情報の一括照会が可能に相続手続きの効率化は預貯金にとどまりません。2026年2月、不動産の所有情報を一括で照会できる制度が始まります。人口減少が進むなか、空き家や所有者不明土地が年々増え続けていることに政府が危機感を募らせていることも背景にあります。法務省は、不動産登記簿の所有名義人ごとに全国の不動産をリスト化する「所有不動産記録証明制度」をスタートさせます。この制度により、相続人は被相続人が保有していた土地や建物の種類、所在地、面積といった情報を把握できるようになります。被相続人が生前にこうした情報を請求することもできます。現在と制度開始後を比較すると次のようになります。現在当該自治体の管轄内の物件に限られる・固定資産税の納税通知書を確認※非課税の物件は表示されない・市区町村が作成する名寄帳を閲覧※非課税の物件は表示されない新制度:全国の物件が対象・非課税の物件も記載される・保有不動産の全容をより把握しやすくなる・「所有不動産記録証明書」として一覧で証明されるPocketsign Verify で低コスト・迅速にマイナカード対応マイナンバーとマイナンバーカードは単なる行政サービスのツールではありません。デジタル社会における本人確認の基盤となり、私たちの生活をより便利に、そして安全なものへと変えていく力を持っています。本記事で取り上げた相続と金融機関口座の領域に限らず、マイナンバーカードの活用場面は大きく広がっているのです。そうなると、あらゆる事業者が自社アプリや自社サイト(Webサービス)をマイナンバーカードに対応させる必要性がますます増していきます。・参考記事:色々と有利なマイナ免許証! 利点と注意点を簡単解説・参考記事:闇バイト対策の決定打! スポットワーク求人にJPKIを活用すべき理由マイナンバーカード活用の代表例が公的個人認証サービス(JPKI)*による本人確認です。ただ、JPKIは高い利便性とUI/UXが得られる半面、自社で対応しようとなると多大な開発リソースを要します。*公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのことです。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長です。そこで、自社開発よりもかなり容易にJPKIを導入できるようにするのが、当社ポケットサインのAPIサービス「Pocketsign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」です。Pocketsign Verifyは、JPKI機能を様々なスマートフォンアプリに組み込むための事業者向けAPIサービスです。電子署名技術を用いた全く新しい本人確認によって、ユーザー体験の向上、離脱率の低下、コストの削減が実現できます。なおかつPocketsign Verifyは、マイナンバーカードを使わずにスマートフォンのみで公的個人認証サービス(JPKI)を利用できる「スマホJPKI」への対応を完了しています。・Pocketsign Verifyについて:https://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#verifyなお、JPKIを他者に提供するには、公的個人認証法に基づき主務大臣の認定を受けて「プラットフォーム事業者」になる必要があります。当社は2023年3月に民間事業者としては16 社目となるプラットフォーム事業者認定を取得しています。このほかにも、マイナンバーカードのご活用に関する事柄は、ぜひ実績豊富な当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/