アップルのスマートフォンiPhone(アイフォーン)にマイナンバーカードの機能を搭載するとの発表から1年あまり。2025年6月24日から、ようやくマイナンバーカードをiPhoneで利用できるようになりました。実物のマイナンバーカードを携行したり読み取り機にかざしたりすることなく、自分のiPhoneで簡便にマイナンバーカード関連の各種サービスが利用可能になります。2025年秋以降にはAndroid(アンドロイド)端末も含め、スマートフォンを健康保険証として利用できるようになるなど、活用シーンは広がります。本記事で改めて「スマホのマイナンバーカード」についてまとめました。・関連記事:マイナカード機能ついにiPhone搭載へ|私たちの生活は何がどう変わる(マイナ活用.com/2024年8月22日公開)目次Appleウォレットにマイナンバーカード格納iPhoneへのマイナンバーカード搭載をめぐっては2024年5月30日、岸田文雄首相(当時)とアップルのティム・クックCEOによるテレビ対談で、2025年春の実装を目指すことで合意に至ったと発表がありました。そこから1年余り。2025年6月24日からiPhoneでマイナンバーカードを利用できるようになりました*。*対応機種はiOS18.5以降を搭載したiPhoneXS(10S)以降の端末Android端末には既に2023年5月からマイナンバーカード機能の搭載が可能となっていました。日本は世界でも有数のiPhone大国で、スマートフォン利用者の過半数がAndroid端末ではなくiPhoneを利用しています。6月24日からは全てのスマホ利用者に門戸が開かれたことになります。これにより、様々な行政手続きをスマホ1台でできるようになりました(下図)。つまり、フェイスIDやタッチIDによってマイナポータルへのログインや各種電子署名ができるということです。マイナポータルで薬や年金、医療費の情報を確認できるほか転居届のオンライン申請、コンビニでの証明書交付(住民票、印鑑登録証など)が可能になりました。ただ、iPhoneとAndroid端末では仕組みが異なります。詳しく見ていきましょう。まずiPhoneでは、マイナポータルアプリの最新バージョンをインストールした後、端末に備えられているAppleウォレットにマイナンバーカードを格納します。デジタル庁のウェブサイトでは、「iPhoneのマイナンバーカード」と表現されています。・https://services.digital.go.jp/mynumbercard-iphone/その名の通り、マイナンバーカードに格納されている下記データがまとめてiPhoneのウォレットに保存されることになります。マイナンバー(個人番号)氏名、住所、生年月日、性別の基本4情報顔写真電子証明書(カード裏面のICチップに格納)↑ 桜模様のマイナンバーカードがウォレットアプリに追加される(出所:デジタル庁ウェブサイト)また、今回の搭載には国際標準化機構(ISO)が定めるデジタルIDの標準規格であるmdoc*が採用されています。mdocでは運転免許証やその他の各種証明書のスマホ搭載を迅速かつ効率的に実現できるという特徴があります。*デジタル庁「マイナンバーカード機能のスマホ搭載について」のP.8一方のAndroidは、マイナンバーや基本4情報、顔写真データは端末に保存されず、カード裏面のICチップに格納された電子証明書のみがスマホ端末に搭載される仕組みとなっています。 電子証明書には「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」の2種類があり、いずれも公的個人認証サービス(JPKI)*に必須のものです。*公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのこと。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長このため、デジタル庁のウェブサイトでは「Androidスマホ用電子証明書搭載サービス」と表現されています。・https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/smartphone-certification#androidiPhoneとAndroidの対応状況を比較すると、下表のようになります。電子証明書(スマホJPKI)マイナンバー(mdoc)基本4情報+顔写真(mdoc)iPhone〇〇〇Androidスマホ〇今後対応予定今後対応予定なお、マイナンバーと基本4情報、顔写真をスマートフォンに搭載するにはマイナンバー法の改正が必要ですが、同法改正案は2024年5月末に通常国会で可決されました**。**デジタル庁公式noteの記事:https://digital-gov.note.jp/n/nfa234825b1ddAndroid端末でも日常シーンでは困らず前述のように、Android端末には電子証明書のみ搭載されますが、これをもってAndroidスマホが必ずしも利便性の面でiPhoneに劣るということではありません。なぜなら、日常的なマイナンバーカードの利用シーンの大半は、電子証明書でカバーできるからです。マイナカードの裏面にあるICチップには、オンラインで本人確認をするための様々なアプリケーション機能が埋め込まれています(下図)。この中で代表的なものが、公的個人認証AP(JPKI-AP)です。JPKI-APに必要な「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」がスマートフォンに搭載されるわけです。署名用電子証明書は、例えば銀行口座・証券口座を開設するときやオンライン決済アプリの個人口座を開設するとき、確定申告を行うときなどに利用します。一方の利用者証明用電子証明書はコンビニの複合機で住民票などの交付を受ける際やマイナポータルへのログインなどに活用されます(下図)。つまり、こうした電子証明書を利用した行政手続きや民間サービスは、iPhoneでもAndroid端末でも可能なのです。なお、マイナンバー(個人番号)は国民をはじめ日本に居住する全ての住民に割り振られた生涯不変の番号であり、より厳格な保護措置が適用される特定個人情報です。マイナンバー自体をiPhoneに保存することは、電子証明書のそれとは重みが少々違います。この辺りはアップルは百も承知のようです。Appleウォレットの身分証明書機能について、ウェブサイトで「ユーザーがどこで、いつ、どのような個人情報を共有したかなど、過去の提示に関する情報は暗号化され、ユーザーのデバイス上のみに保存される。アップルがユーザーの提示履歴を知ることはない」「Apple製品は、利用者が自分の情報を自分でコントロールでき、プライバシーを守るように設計されている。Appleウォレットの身分証明書は、物理的な身分証明書では実現できないセキュリティとプライバシーのメリットを利用者に提供する」と表明しています。・参考:Apple、日本でのAppleウォレットの身分証明書機能の展開を発表、米国外で初(アップルの2024年5月30日付ニュースリリース)実際、ウォレットは外部から読み取れないセキュアエレメントと呼ばれる高セキュリティのチップに格納されており、物理的な堅牢性は高くなっています。なお、マイナンバーカードのICチップとスマートフォンのICチップのセキュリティについては、マイナ活用.comの別記事「マイナンバーカードのICチップ徹底解説! 本人確認が劇的に変わる!」で詳説しています。iPhoneなら本人確認書類として利用可能ただ、iPhoneにマイナンバーカードが丸ごと搭載されることによるメリットもあります。iPhoneをマイナンバーカードそのもの(実物のマイナンバーカード)と同様に本人確認書類として利用できる点です。デジタル庁は、民間事業者や地方自治体が実物のマイナンバーカードによって顧客や住民の本人確認を確実に行うための「マイナンバーカード対面確認アプリ」(iOS/Android)を提供しています。・マイナンバーカード対面確認アプリ:https://services.digital.go.jp/mynumbercard-check-app/このマイナンバーカード対面確認アプリのiOS版では、2025年7月中にも「iPhoneのマイナンバーカード」を用いて本人確認ができるようになります。つまり、実物のマイナンバーを携行せずとも、マイナンバーカードを搭載したiPhoneを店舗や窓口で提示すれば本人確認や年齢、住所の確認を受けることができるのです。なお、Androidユーザーも、前述のマイナンバー法の改正により、マイナンバー(個人情報)と基本4情報(氏名、生年月日、住所、性別)、顔写真をスマートフォンに搭載できるようになりました。現在のところAndroid端末への対応時期は未定ですが、対応が為されればスマホを本人確認書類として利用可能になります。また、iPhoneのマイナンバーカードは2025年9月から全国の医療機関で「マイナ保険証」として利用できるようにする予定で国が実証を進めています。iPhoneだけでなく、Androidスマホにも対応させる予定です。・参考:https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2027866.htmlまた、2026年に私たちが行う2025年分(令和7年分)の確定申告に向け、実物のマイナンバーカードを読み取ることなく、iPhoneだけで申告書の作成とe-Tax送信ができるよう準備中とのことです。一方で、iPhoneのマイナンバーカードは運転免許証としては現在のところ利用不可で、対応時期も明らかになっていないため注意が必要です。Pocketsign Verify で低コスト・迅速にスマホJPKI対応以上に見てきたとおり、iPhoneにマイナンバーカードが搭載できるようになったことで、私たちの生活のおける行政手続きや民間サービスは非常に便利になります。公的個人認証サービスを活用した本人確認や電子署名といったオンライン手続きを、マイナンバーカードを使わずに自身のスマホだけでできるようになるからです。民間事業者のサービスを例にとると、ユーザー(消費者・顧客)がスマホJPKIを利用するには、事業者側でもスマホアプリやWebサービス(Webサイト)をスマホJPKIに対応させる必要があります。アプリやWebサイトがスマホJPKI未対応だと、ユーザーはスマホJPKIを利用できないからです。その場合、ユーザーは従来と同様にマイナンバーカードを手元に用意し、スマホにかざす動作が必要になります(下図)。これでは、ユーザーのUI/UXが損なわれ、スマホJPKIに対応済みのアプリ・Webサービスに顧客獲得競争で劣後してしまいます。一方で、事業者がスマホJPKIを提供するには、政府が定めるサービスプロバイダ(SP事業者)またはプラットフォーム事業者(PF事業者)となる必要があります*。*公的個人認証サービスを他者に提供するには、公的個人認証法に基づき主務大臣の認定を受けてプラットフォーム事業者(PF事業者)になる必要があります。当社は2023年3月、民間事業者としては16 社目となるPF事業者認定を取得しています。このうちPF事業者になるには公的個人認証法に基づく主務大臣認定を受けなければならず、技術的なハードルが非常に高いのが実情です(なお、当社はPF事業者です)。ただ、SP事業者になることで、PF事業者を通してスマホJPKIに対応することが認められています。この方式を採用すれば実装までの期間を短縮し、安価かつ迅速にスマホJPKIを導入できます。PF事業者である当社は既に、SP事業者向けAPIサービスPocketSign VerifyをiPhoneとAndroidスマホの両方のスマホJPKIに対応させています。・Pocketsign Verifyについて:https://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#verifyこのほかにも、マイナンバーカードのご活用に関する事柄は、ぜひ実績豊富な当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/