デジタル社会の実現に向け、行政サービスのオンライン化が求められているなかで「マイナポータルAPI」は、自治体のDXを加速させる大きな可能性を秘めています。一方で、その活用は自治体にとどまらず、医療や金融、本人確認などの分野で民間事業者による導入も広がりつつあります。とはいえ、「API」と聞くと少し難しそうに感じる方もいるかもしれません。そこでこの記事では、自治体職員や企業担当者の方に向け、マイナポータルAPIとは何か、どのような機能があり、自治体業務や住民サービスにどう活かせるのか、さらに導入に向けたステップや事例までを解説します。なお、実際のAPI活用においては自治体が直接開発するだけでなく、多くの場合、外部ベンダーが提供するサービスやシステム連携を通じて行われます。本記事は、そうした多様な活用形態を念頭に、抑えておくべき知識や推進のポイントを整理しています。API活用による次世代の行政サービス実現への第一歩を、本記事を通じて見つけていただければ幸いです。目次マイナポータルAPIの全体像自治体のDXを進めるうえで重要な基盤となるのが「マイナポータルAPI」です。国のデジタルガバメント戦略においても、マイナンバーカードの普及と行政手続きのオンライン化は中心的な取り組みとされており、マイナポータルAPIはその技術的な基盤を担っています。ここでは、その全体像を理解するために、まずはマイナポータル、API、そしてマイナポータルAPIの関係について整理します。▼自治体DXに関する概要や事例については以下記事で解説しています。自治体DXの先進的な取り組み事例10選【人口別】マイナポータルとは:国民と行政をつなぐオンライン窓口引用:マイナポータル|デジタル庁 よりマイナポータルは、マイナンバーカードを使ってログインし、行政サービスや自分の情報をオンラインで確認できる国民専用のポータルサイトです。2025年6月時点で登録者数は7,900万人を超え、国民生活と行政を結ぶ基盤となっています。代表的な機能は次の3つです。ぴったりサービス:子育てや介護などに関する行政手続きを検索・オンライン申請できるわたしの情報:所得や予防接種履歴など、自分の情報を確認できるお知らせ機能:行政機関からの通知をオンラインで受け取れるこれらは「申請・確認・通知」という行政サービスの基本を支える中核機能です。さらに、公金受取口座の登録・確認、医療・子育て分野の情報連携、民間サービスとのデータ提供同意など、機能は順次拡大しています。APIとは:システム同士をつなぐ仕組みAPI(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやシステム間で機能やデータを連携させるための「接続口」であり、そのためのルールや手順を定めたものです。APIを利用することで、あるシステムの機能を別のシステムから呼び出したり、データを安全に交換したりすることが可能になります。これにより、既存の機能を効率的に活用し、新しいサービスを迅速に開発することができます。例えば、スマホの地図アプリで「近くのレストランの口コミ」や「電車の運行状況」が表示されるのは、地図アプリと他のサービス(口コミサイトや鉄道会社のシステム)がAPIでつながっているからです。同じように、自治体のシステムと国のシステムもAPIを介してつながることで、住民の手続きが便利になり、職員の作業も減らすことができます。マイナポータルAPIとは:行政データを外部システムから安全に利用するための仕組み引用:マイナポータルAPI 仕様公開サイト|デジタル庁 よりマイナポータルAPIは、マイナポータルに搭載されている機能や、各行政機関が保有するデータを、外部のシステムやサービスから安全に利用できるようにした仕組みです。利用には必ず住民本人の同意が必要で、デジタル庁が提供・管理しているため、自治体や民間事業者にとっても安心して導入できる環境が整っています。実際にマイナポータルAPIを活用すると、例えば次のような効果が期待できます。住民が自宅からオンラインで手続きを完結できる所得証明などの紙の提出が不要になり、住民の負担が減る職員による二重入力がなくなり、業務の効率化が進むこのようにマイナポータルAPIは、住民サービスの利便性を高めると同時に、自治体や事業者の業務効率化にも大きく貢献する仕組みです。マイナポータルAPIで実現できることマイナポータルAPIは、その目的や機能に応じて複数の種類が提供されており、これらを組み合わせることで、自治体は多岐にわたる業務改善と住民サービス向上を実現できます。API連携で実現できる主な機能カテゴリー引用:マイナポータルAPI 仕様公開サイト|デジタル庁 よりマイナポータルAPIを通じて、主に以下のような機能連携が可能です。これにより住民はより便利に、職員はより効率的に業務を進められるようになります。自己情報の取得連携住民本人の同意に基づき、行政機関が保有する所得・税、世帯、福祉、健康・医療などの情報を申請手続きに必要な範囲で取得でき、添付書類を削減できます。電子申請連携マイナポータルの「ぴったりサービス」等で提供されている各種行政手続き(子育て、引越し、介護等)のオンライン申請を、自治体独自のウェブサイト等からも可能にします。お知らせ・通知連携行政機関からのお知らせや、e-Tax・ねんきんネットといった民間送達サービスからの通知(控除証明書など)を、住民が同意したサービス上で受け取れるようになります。(※各APIの技術的な詳細や最新情報については、「マイナポータルAPI仕様公開サイト」をご参照ください。)住民へのメリット:いつでも、どこでも、もっと便利に自治体や連携する事業者がマイナポータルAPIを活用したサービスを導入すると、住民の暮らしは次のようにより便利で負担の少ないものになります。オンライン申請で時間と場所を選ばないAPI連携によりオンライン申請が可能になった手続き(子育てや引越し等)は、24時間365日、自宅等から行えるようになり、窓口へ行く時間がない方にも便利になります。添付書類の削減で負担軽減自己情報取得APIなどを活用したサービスでは、申請に必要な所得証明書や住民票などを別途取得・提出する手間や手数料負担が軽減されます。自身の情報へ簡単にアクセスAPIを通じて自身の情報を取得できる健康ポータルアプリ等を利用すれば、健診結果や予防接種履歴などをいつでも手軽に確認でき、健康管理等に役立ちます。※こうしたサービスを利用するには、マイナンバーカード、対応するICカードリーダーやスマートフォン、そしてマイナポータルアプリが必要です(詳細はマイナポータルの公式サイト参照)。職員・組織へのメリット:業務効率化と行政サービスの質向上自治体がマイナポータルAPIを活用したサービスを導入すると、定型的な作業が減り、その分を住民対応や政策立案といった本来注力すべき業務に充てられるようになります。組織全体の働き方に変化をもたらす効果が期待できます。窓口・手作業の削減とミス防止オンライン申請や添付書類削減によって、窓口での受付・紙書類の確認・システムへの手入力といった作業が減り、入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーも防げます。コスト削減とペーパーレス化の推進印刷・郵送・保管コストや人件費の削減につながります。ペーパーレス化が進むことで、環境負荷の低減にも寄与します。データ精度向上と政策立案への活用住民の所得情報・世帯構成・福祉情報・健診結果などを、行政機関が公式に保有する一次データとして直接取得できるため、提出書類や自己申告に頼る場合と比べてデータの正確性・信頼性が高まります。その結果、たとえば「子育て世帯の支援策の到達度」や「地域ごとの高齢者健診受診率」といった分析が可能となり、客観的なデータに基づく政策立案や評価(EBPM:Evidence Based Policy Making)を進められます。参照:内閣府におけるEBPMへの取組|内閣府自治体でのマイナポータルAPI活用事例ここからは、マイナポータルAPI仕様公開サイトの「活用事業者一覧」に掲載されている情報の中から、自治体における具体的なサービスの活用事例をいくつか紹介します。 (※最新のリストは公式サイトをご確認ください。)事例1:住民の健康増進を支援(神奈川県「マイME-BYOカルテ」)概要・目的神奈川県が提供するPHR(Personal Health Record)アプリ「マイME-BYOカルテ」は、住民が日々の健康記録に加え、マイナポータルAPI(自己情報取得API、医療保険情報取得API等)連携により、自身の薬剤情報、特定健診結果などをアプリ上で一元管理できるサービスです。住民の主体的な健康管理を支援することを目的としています。主な利点利用者は自身の正確な健康・医療情報をスマートフォンでいつでも確認でき、健康意識の向上や生活習慣の改善に繋がることが期待されます。紙の管理の手間や紛失リスクも軽減されます。引用:スマートフォンアプリ「マイME-BYOカルテ」|神奈川県ホームページ より事例2:福祉MaaSとの連携(群馬県「GunMaaS及びmytap」)概要・目的群馬県が推進するMaaS(Mobility as a Service)アプリ「GunMaaS」では、自己情報取得APIを活用しています。利用者がマイナンバーカードを使ってマイナポータル連携を行うことで、要介護・要支援認定情報をアプリに連携させ、福祉タクシーやデマンド交通といった特定の福祉交通サービス(福祉ムーバー)の予約を可能にしています。主な利点これまで、利用場面によっては必要だった介護保険被保険者証等の提示や資格確認の手間を省き、オンライン上でスムーズに対象者であることを確認した上で、適切な移動サービスの予約ができるようになります。これにより、高齢者や移動に制約のある方の移動手段確保と利便性向上に貢献しています。また、アプリ内でマイナンバーカードを登録することにより、市民割引など他のサービスが利用可能になる場合もあります。引用:GunMaaS|群馬県新モビリティサービス推進協議会 より事例3:オンライン申請における口座入力の手間削減(神奈川県相模原市)概要・目的相模原市が提供する「オンライン還付金請求受付サービス」は、市民等が市税還付金の受け取り申し込みをインターネット経由で行えるサービスです。このサービスでは、自己情報取得APIを活用しています。主な利点マイナポータルに公金受取口座情報を登録済みの住民は、還付金を受け取る口座情報を改めて入力する手間が省けます。これにより、申請手続きが簡便になり、入力ミスの防止にも繋がります。参照:市税の還付について|神奈川県相模原市事例4:子育て世帯への支援を迅速化(宮城県「ポケットサイン子育て支援」)概要・目的宮城県では2025年11月より、ポケットサインが提供する「ポケットサイン子育て支援」を導入しました。このサービスではマイナポータルAPIを活用し、親子のマイナンバーカードを読み取ることで「子育て世帯であること」や「親子関係」をオンライン上で正確に認証します。 このサービスは、従来は紙や窓口申請が必要だった「子育てパスポートの発行」や「地域応援ポイントの付与」といった子育て支援サービスを、アプリ上で円滑に利用することを目的としています。主な利点住民は、市役所の窓口へ行くことなく、スマートフォンだけでパスポートの即時発行やポイントの受け取りが可能となり、時間的・精神的な負担が大幅に軽減されます。自治体側にとっても、申請書類の確認・郵送・窓口対応といった事務作業が削減され、コスト効率が高まると同時に、支援を必要とする世帯へスピーディーかつ正確にサービスを届けられるようになります。参照:【新プロダクト】マイナンバーカードを活用した子育て支援アプリ「ポケットサイン子育て支援」を開発PocketSign MynaConnect|マイナポータルAPIと接続する開発プラットフォームPocketSign MynaConnectは、事業者のサービスとマイナポータルAPIとの間に立ち、接続を仲介・事業者サービスの実装を簡略化する開発プラットフォームです。特徴は以下の通りです。独自の開発環境を無償提供:モック環境を使って実装・検証が可能PoCから本番への移行が容易:導入工数を削減し、スピーディーな開発を実現インフラ要件やドキュメントを完備:開発者が自走できる環境を提供現在は、マイナポータルAPIの中でも特に利用ニーズが高い「自己情報取得API」に対応しています。これにより、利用者は世帯・戸籍・所得・医療などの公的情報を、サービス内で安全にやり取りできるようになります。今後は「医療保険情報取得API」や「PMH情報連携API」にも順次対応を進め、利用シーンをさらに拡大していきます。※「PocketSign MynaConnect」はデジタル庁が関与するサービスではありません。ソフトウェア開発業者がマイナポータルAPIとスムーズに接続し、効率よく開発を進められるよう支援するプラットフォームです。※「PocketSign MynaConnect」を活用して開発した場合でも、マイナポータルAPIの利用が保証されるわけではなく、デジタル庁へのサービス利用企画申請書の提出および審査が必要になります。参考:マイナポータルAPIとの接続を仲介する開発プラットフォーム「PocketSign MynaConnect」の提供を開始マイナンバーカードの活用ならポケットサインポケットサイン株式会社はマイナンバーカードの普及促進と活用拡大に注力しており、自治体や民間企業との積極的な協業・DXの支援を推進しています。マイナンバーカードを使って何かをしたい時は、ぜひ当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/