2024年12月2日から現行の健康保険証が新規発行されなくなり、保険証の機能はマイナンバーカードへ一体化されます。偽造やなりすましによる詐欺犯罪の防止や薬剤履歴の適切な把握などが目的です。また、2025年3月からはマイナンバーカードを運転免許証としても利用できるようになります。こうしたマイナンバーカードの進化は、私たちの日常生活をとても便利にしてくれますが、「マイナ保険証」といえば他人の情報が誤ってひも付けられるなどトラブルが起きていたのも事実です。何が留意点で、何がメリットなのか。本記事で解説していきます。目次「マイナ保険証」こんなメリット政府は2022年、現行の健康保険証(健康保険被保険者証)を2024年12月2日から廃止することを決めました。廃止後はマイナンバーカードを保険証として医療機関や薬局で利用することになります。この「マイナ保険証」は、使用の際に顔認証付きカードリーダーを利用します。このため政府は、これまでよりも正確な本人確認ができることや過去の医療情報の提供に関する同意取得を適切に行えることで、より良い医療を受けられるメリットがあると説明しています。ただ、「廃止」とはいっても、現行の保険証がすぐに使えなくなるわけではなく、新規発行が停止されるということです。期限の定めがない保険証は最長で新規発行停止から1年後(つまり2025年12月1日)までは使用可能です。国民健康保険の場合、保険証の有効期間は通常1年で原則として毎年更新が必要ですが、新規発行停止から次の有効期限までは使用できます。つまり、2025年12月2日から従来の保険証は使えなくなり、マイナ保険証へ完全移行するわけです。下図のとおり、写真入りのマイナンバーカードは現行保険証のようななりすましは困難です。そして、電子証明書が格納されているICチップは耐タンパー性*を備えているため、偽造はほぼ不可能とされています。保険証を悪用した特殊詐欺などの防止にも役立つわけです。*耐タンパー性:ICチップ自身が備える偽造・不正防止策のこと。例えば無理に情報を読み取ろうとすると、ICチップのメモリの内容が消去されるといった対策がある(公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン(第1.4版)より)そして、マイナ保険証の実用的なメリットは多岐にわたります。まず、高額療養費制度の利用が簡便になることです。高額療養費制度は、1カ月の自己負担額(窓口負担額)が所得に応じた限度額を超えた場合に超過分が後から還付される制度ですが、現行保険証では還付まで3カ月ほど要するほか、申請書類を揃える必要があります。しかしマイナ保険証を利用すると、「限度額情報の表示」に同意すれば限度額を超える支払いは免除されます(オンライン資格確認を導入している医療機関が対象)。また、自己負担割合が軽減されている70歳以上75歳未満の高齢者は、マイナ保険証の利用により「高齢受給者証」の提出が不要になります。医療の「質」の向上も重要です。情報提供に同意することで、過去に処方された薬や特定健診などの情報を医師や薬剤師と正確に共有することが可能です。初めて受診・訪問する医療機関・薬局でも本人が情報提供に同意すれば、医師と薬剤師は他の医療機関における診療・処方箋のデータを確認できるため、より良い医療が受けられます。確定申告でも利点があります。世帯の年間医療費が10万円を超えた場合に所得税が還付される医療費控除です。マイナ保険証を使うとマイナポータルで年ごとの医療費を把握でき、かつ医療費情報は国税庁のe-Taxと連携しているので、自動的に転記できます。集計や転記の手間が省け、領収証を保管・提出する必要もありません。なお、2024年10月下旬から厚生労働省の主導の下、各健保がマイナンバーを登録している被保険者宛てに「資格情報のお知らせ」を郵送しています。このお知らせには健康保険の資格情報とマイナンバーの下4桁が記載されていて、被保険者が健保に登録されている情報に間違いがないか確認できるようにしているのです(2025年12月2日以降、オンライン資格確認ができない医療機関等では、マイナ保険証と資格情報のお知らせの提示が必要なため、その対策の意味合いもあります)。自民党総裁選で「延期」言及。不安点は?一方で「マイナ保険証」といえば、2024年9月に行われた自民党総裁選挙において、候補者が現行保険証の廃止時期の見直しに言及し、他の候補者が反論したことで、ちょっとした話題となりました。健康保険証の廃止時期、延長論が再燃 自民総裁選候補者(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA090Y60Z00C24A9000000/)マイナ保険証めぐり、現行保険証「廃止」見直し検討 総裁選の争点に(https://www.asahi.com/articles/ASS9B45KWS9BUTFL00TM.html)小泉氏「保険証廃止延期必要ない」 自民総裁選(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024091001104&g=pol)現在、マイナンバーカードに保険証機能をひも付けるかどうかは被保険者の任意となっていて、マイナ保険証を持っていない人には、現行保険証の廃止後も当面使用できる資格確認書が交付されます(資格確認書の有効期限は保険者によって異なりますが、4~5年が多いようです)。また、2022年には全国の自治体でマイナンバーカードに他人の情報が誤ってひも付けられるトラブルが相次ぎ、マスメディアで大きく報じられました。また、マイナンバーカードの保有者は人口の74.8%、マイナ保険証の登録者は60.3%に上るのに対して、医療機関の窓口での利用率は件数ベースで病院20.56%、薬局12.26%(いずれも2024年8月時点)にとどまっています(下グラフ)。こうしたことから、総裁選で「国民の間にいろんな不安がある」「不安の声をしっかりと聞いて対応を精査したい」などと述べる候補者が複数いたのでした。ただ、ひも付けミスの原因は、概ね以下のようなものです*1。*1:デジタル庁「マイナンバー 制度 「報告」と「対策」」保険者が、氏名と生年月日が同じで住所が異なる人を誤って紐づけした(本人からマイナンバーの申告がない場合、担当者が住民基本台帳で本人のマイナンバーを調べるが、このときに氏名や生年月日が同じ別人のマイナンバーを登録してしまった)役所のマイナポータル支援窓口などで使用されるパソコンで、登録を済ませた人がログアウトせずに次の人に替わった際、前の登録者のデータが上書きされたこのため厚生労働省は2024年5月、情報の新規登録時などにひも付けミスを自動的に確認できるシステムの運用を始めました。また、被保険者自身もマイナポータルにログインすることで自分の保険証情報が正しく登録されているかどうか確認できるようになっています*2。*2:マイナポータル「04 健康保険証情報を確認する」つまり、保険証情報のひも付けミスは、マイナンバーカードのセキュリティーおよびマイナンバーカード制度の信頼性とは直接関連しない、人為的な運用上の問題によるものであることがお分かりいただけたと思います。なおかつ、現行保険証の廃止時期を延期するにはマイナンバー法の改正が必要です。平将明デジタル相は2024年10月2日の記者会見で、従来の政府方針を堅持する方針を明らかにしました*3。マイナ保険証への移行は予定どおりに行われます。*3:平デジタル相 “今の健康保険証の発行終了 従来の日程どおり”(NHK News Web)なお、マイナ保険証を使う場合、医療機関や薬局が被保険者(患者)のマイナンバーを取り扱うことはありません*4。窓口のカードリーダーでは、マイナンバーではなくマイナンバーカードのICチップに保存されている利用者証明用電子証明書を利用して本人確認を行うからです。*4:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問 QA_No.9」運転免許証もマイナンバーカードでマイナンバーカード活用の場面は運転免許証にも広がります。警察庁は2024年9月12日、道路交通法施行規則などの改正案をまとめ、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を2025年3月から施行することを明らかにしました。2024年度中に一体化させることを目指していた政府の方針に沿った動きです。具体的には、来年3月24日以降、各地の運転免許センターや一部の警察署で手続きすると、マイナンバーカードを運転免許証として利用できるようになります。以下が「マイナ免許証」の主なポイントです。免許証のICチップに搭載されている情報をマイナンバーカードのICチップに記録マイナンバーカードの券面に変更は生じないマイナ免許証への移行は任意で、現行の免許証は廃止されない(両方持つことも可能)マイナ免許証のメリットは、マイナ保険証よりも大きいかもしれません。まず、転居や転出で住所変更があった場合、自治体に届け出るだけで済みます(現在は警察への届け出も必要)。また、免許更新時において、優良運転者と一般運転者はマイナポータルで所定の講習動画をオンライン視聴すれば法定の講習を受講したとみなされます(視力検査と写真撮影は引き続き運転免許センターや警察署で実施)。このほか、更新手数料や講習にかかる手数料がマイナ免許証は現行の免許証よりも安くなります。以上のように、健康保険証や運転免許証としてマイナンバーカードを携行する場面が増えると、「マイナカードを紛失したらどうするの」という不安が頭をもたげる人も少なくないでしょう。政府は、現行保険証を廃止する2024年12月2日までに、速やかにマイナンバーカードの再発行が必要な場合を対象に、自治体経由ではなくカードの発行主体であるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)から申請者に直接送付することで、申請から1週間以内(最短5日)で交付できるようにする方針です*。*:マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会・中間とりまとめ以降の検討状況(22ページ)地方公共団体などのDXを支援するポケットサインマイナンバーカードは今後ますます私たちの日常生活に浸透し、無くてはならないものになっていきます。そして、地方自治体でも民間企業においても、マイナンバーカードとスマートフォンを掛け合わせた様々なサービスが、マイナンバーカードの普及促進と利便性向上には欠かせません。当社ポケットサイン株式会社はマイナンバーカードの普及促進と活用拡大に注力しており、自治体や民間企業との積極的な協業・DXの支援を推進しています。当社が開発するスマホ用デジタル身分証アプリ「ポケットサイン」は、あらゆる種類のミニアプリを実装することができ、全国の自治体や企業に活用していただいています。そして、「ポケットサイン」はマイナンバーカードを使わずにスマートフォンのみで公的個人認証サービス(JPKI)*を利用できる「スマホJPKI」への対応を完了しています。ポケットサインを導入済みの地方自治体では、マイナンバーカードを携行していなくともスムーズにアプリをご利用いただけます。*:公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure):マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に認証する仕組みのことです。安全・確実かつ厳格な本人確認が手軽にできる点が特長です。▼ポケットサインの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service事業者向けにはPocketSign Verifyまた、PocketSign Verify(ポケットサイン・ベリファイ)は、スマホアプリを持つ事業者向けのAPIサービスです。公的個人認証サービス(JPKI)における証明書を用いたデジタル署名の検証を行うAPIと、マイナンバーカードと通信して署名の生成や証明書の吸い出しを行うSDKを利用できます。マイナンバーカード活用に向けた開発用プラットフォームであるPocketSign Platform(ポケットサイン・プラットフォーム)から利用が可能です。PocketSign Verifyもマイナンバーカードを使わずにスマートフォンのみで公的個人認証が利用できる「スマホJPKI」に対応済みです。▼PocketSign Verifyの詳細はこちらhttps://pocketsign.co.jp/service/pocketsignplatform#verifyなお、こうしたJPKIを他者に提供するには、公的個人認証法に基づき主務大臣の認定を受けて「プラットフォーム事業者」になる必要があります。当社は2023年3月に民間事業者としては16 社目となるプラットフォーム事業者認定を取得しています。マイナンバーカードのご活用に関する事柄は、ぜひ実績豊富な当社にご相談ください。▼問い合わせはこちらからhttps://pocketsign.co.jp/contact▼ポケットサインについてはこちらhttps://pocketsign.co.jp/