2026-03-30
各種調査で集計作業がほぼゼロに|宮城県が進める行政調査DX
多くの自治体では、長年、紙やウェブを中心とした行政調査が行われてきましたが、「集計に時間がかかる」「外注コストが高い」「属性精度に限界がある」といった課題がありました。
宮城県総合政策課では、こうした課題に対し、マイナンバーカード連携型のアプリ「ポケットサインアンケート」を活用。集計に数週間を要していた調査業務を、ほぼ即時に結果を可視化できる仕組みへと転換し、調査の質向上と運用効率の両立を実現しています。
本記事では、県民意識調査を所管し、庁内での「ポケットサインアンケート」の活用を進めている、宮城県総合政策課の吉田様に、調査業務がどのようにアップデートされたのか、そして今後の展望をどのように考えているのかを伺いました。

(写真:総合政策課 吉田様)
(取材・構成:ポケットサイン株式会社)
「聞きたいときに、聞けない」──従来調査の限界
ーーまず、アンケートミニアプリ導入前は、どのような方法で県民の声を集めていたのでしょうか。
吉田様 行政が行う調査は、基本的に紙やウェブで実施します。県の広報紙やホームページで周知し、それをご覧になった方々に回答していただく方法や、こちらから調査対象者の方に調査票を郵送させていただく方法です。
ただ、周知し回答いただく方法ではどうしても行政に関心の高い方の声が多くなり、そうでない層のご意見をいただきにくいという課題を以前から感じていました。また、調査票を郵送する方法は準備等の負担が大きく、機動力に欠けるという側面もあります。
ーー実務面での負担はどのようなものなのでしょうか。
吉田様 準備から集計までにかかる時間と手間は、かなり大きいですね。例えば県民意識調査では、市町村の選挙管理委員会が管理している選挙人名簿などから約4,000人を無作為抽出し、郵送で調査票を送付していました。抽出作業や郵送対応、これらの業務の委託手続き、回収後の集計まで含めると、結果がまとまるまでに数か月かかります。
「今、このテーマについて県民の声を知りたい」と思っても、結果が出る頃には状況が変わってしまい、どうしても“過去のデータ”になってしまいます。頻繁に調査を実施できないことにも、もどかしさを感じていました。

導入の決め手は「機動性」と「データの信頼性」
ーーそうした課題を踏まえ、アンケートミニアプリ導入を検討されたわけですね。
吉田様 はい。導入の決め手は大きく2つあります。
1つは、聞きたいときに機動的に調査できること。もう1つは、マイナンバーカード連携によって、居住市区町村や年代などの正確な属性データを取得できることです。
住民の属性を絞ったうえでアンケート対象者を設定し、プッシュ通知で配信できる点も魅力でした。「どの年代」「どの地域」の声なのかを正確に把握できることは、単に回答数を集めるだけでなく、EBPM(証拠に基づく政策立案)の観点でも非常に重要だと考えています。
ポケットサインアンケートはスマートフォンアプリ上で実施できるため、県民の方が時間や場所を選ばず、気軽に県政に参加できます。そのうえで、行政として信頼できるデータが取得できる。
これらを両立できる点が、ポケットサインアンケート導入の決め手でした。
「本当に答えてもらえるのか?」という率直な不安
ーー一方で、導入前には不安もあったのではないでしょうか。
吉田様 正直に言うと、「アプリでの行政のアンケートに、どれだけ答えてもらえるのだろうか」という不安はありました。プッシュ通知をしても反応がなかったらどうしよう、堅いイメージからスルーされてしまうのではないか、と。
アプリだからこそ集まった2万件を超える回答
ーー実際に運用を始めてみて、反応はいかがでしたか。
吉田様 良い意味で、想定を裏切られました。
プッシュ通知を送らない段階でも、自発的に回答してくださる方が想像以上に多かったんです。
みやぎポイントなど、他のミニアプリを利用する際に回答してくださる方も多かったのではないかと思います。
「わざわざアンケートに答える」のではなく、日常的にアプリを使うなかで自然に参加できるという心理的ハードルの低さは、従来の紙やウェブ調査にはなかったものだと感じています。

ーー導入をしてからこれまでにどのくらいのアンケートを実施されましたか。
吉田様 総合政策課で所管している県民意識調査に限らず、庁内での活用を広げ、これまでに13件実施しました(※)。回答数は数千件から、多いものでは2万件を超えています。これだけ多くの反応が得られるとは、正直想像していませんでした。
マイナンバーカード連携により、居住市区町村などの入力が不要な点も、回答のしやすさにつながっていると思います。
※2025年インタビュー実施時点の件数。2026年2月末時点では17件実施
集計作業は“ほぼゼロ”。職員の時間の使い方が変わった
ーー業務面での変化について教えてください。
吉田様 一番大きいのは、アンケートアプリを活用した場合、集計作業が本当にほぼゼロになっていることです。紙の調査では、回収後の集計だけで数週間かかることもありましたが、今は管理画面からCSVを出力するだけで済みます。
県民意識調査においては調査手法の一つとしての活用に留まっていますが、庁内全体で見れば、無作為抽出や郵送対応、委託手続きといった準備作業も不要になり、調査を実施する前後にかかっていた事務的な負担が大きく削減され、業務の効率化が着実に図られています。
ーーその結果、職員の業務の中身にはどのような変化がありましたか。
吉田様 これまで単純作業に使っていた時間を「結果をどう読み取るか」「次の施策にどうつなげるか」といった企画的な業務に使えるようになったと感じています。
県民の方にとっても、マイナンバーカード連携によって居住市区町村などを入力する手間が省けていますし、職員側も居住市区町村の表記揺れや重複回答の確認作業が不要になります。行政・住民双方にとって、負担が軽くなったと感じています。
「現在進行形のデータ」が、政策判断を支える
ーーリアルタイム性についてはいかがでしょうか。
吉田様 調査期間中でも、回答状況をリアルタイムで確認できる点は大きいですね。傾向を見ながら、「この層の回答が少ない」と感じたら、機能として追加でプッシュ通知を送るといった対応もできます。
ーーそうした運用が、政策判断にはどのように影響していますか。
吉田様 調査が「終わってから分析するもの」ではなく、「進行しながら活用できるもの」に変わりました。結果として、調査結果を「過去の分析」ではなく、精度の高いニーズの把握が可能な「現在進行形のデータ」として実態に即した施策の最適化に使えるようになったと感じています。
「点」から「線」へ。県庁全体での活用を見据えて
ーー最後に、今後の展望を教えてください。
吉田様 現在は、従来手法で行っていた調査をアプリでの実施に転換したり、調査手法の一つとして活用したり、他ミニアプリのフィードバックを目的とした調査といった「点」での活用が主となっていますが、今後は
検討段階
実施中
事後評価
といった事業や施策を展開する上でのPDCAサイクルに合わせた「線」での活用を広げていきたいと考えています。
将来的には、庁内のどの部署でもメールを送る感覚でアンケートを実施できるような標準的なツールとして定着させたいですね。

まとめ:聞きたいときに聞ける仕組みが、行政調査を前に進める
従来の行政調査は、どうしても「準備に時間がかかる」「結果が出る頃には状況が変わっている」といった制約を抱えていました。
宮城県総合政策課が向き合ってきたのも、そうした“アナログの限界”でした。
ポケットサインアンケートの導入によって、調査は「待つもの」から「動かせるもの」へと変わりました。
マイナンバーカード連携による正確な属性データの収集、集計作業の大幅な効率化、そしてリアルタイムに傾向を把握できる運用。これらは単なる業務改善にとどまらず、現在進行形のデータを基に政策を判断するための行政調査を可能にしています。
さらに、宮城県はアンケートを単発で終わらせるのではなく、計画・実行・評価・反映というPDCAの中で活用していく構想も描いています。
「声を聞きたいと思った瞬間に、アンケートを実施できる」
そんな共通基盤が整えば、行政と県民との距離は、より近いものになっていくでしょう。
調査のあり方を見直すことは、政策の質を高めることにもつながる。
宮城県の取り組みは、行政調査をアップデートし、EBPMを支える新たな土壌をつくる一歩と言えます。
ポケットサインアンケートについて
マイナンバーカードと連携するスーパーアプリ「ポケットサイン」内のミニアプリです。
住民がスマートフォンから、いつでも・どこでも簡単に回答でき、自治体が正確な属性データに基づくアンケート調査を効率的に実施できる仕組みを提供します。
紙や従来のWebアンケートでは難しかった「回収率の向上」「集計負担の軽減」「信頼性の高いデータ取得」を同時に実現し、 行政調査やEBPMを支える新しい住民コミュニケーションのかたちを実現します。

特長1:スマートフォンで完結する、住民負担の少ない回答体験
住民はスマートフォン一つで、いつでもアンケートに回答できます。 マイナンバーカード連携により、住所や年齢などの入力は不要。「わざわざ答えるアンケート」ではなく、日常の中で自然に参加できる設計により、回収率の向上につながります。
特長2:正確な属性データに基づく、信頼性の高い調査
デジタル身分証と連携しているため、1人1アカウントが担保された状態でアンケートを配信・回収できます。なりすましや重複回答のリスクを抑えつつ、年代・地域などの属性をもとにした分析が可能となり、EBPM(証拠に基づく政策形成)にも活用しやすいデータを取得できます。
特長3:集計・管理を効率化し、調査業務を大幅に省力化
回答は管理画面上でリアルタイムに自動集計。紙アンケートで必要だった回収・入力・集計といった作業を大幅に削減できます。
調査結果をすぐに把握できるため、「結果を待つ調査」から「進行しながら活用する調査」へと運用を変えることが可能です。
※参考:
3,000人規模の紙・郵送による意識調査を想定した場合、印刷・封入・郵送・外注集計などを含めると、1回あたり約100万〜200万円規模のコストと、数十時間以上の職員工数が発生するケースもあります。
デジタル調査へ移行することで、こうした物理コストや入力・確認作業の削減が期待できます。(※数値は一般的なモデルケースによる概算)
自治体DXの新たな形
ポケットサインを活用したミニアプリの導入は、自治体主導のデジタル施策において新たな可能性を示しました。宮城県の成功事例は、他の自治体にも応用可能であり、地域活性化の手段として大きな注目を集めています。
「ミニアプリの活用で、地域活性化の選択肢が広がる」。今後もポケットサインの可能性は広がり続けるでしょう。
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