2026-01-26
平常時から使われる「県民アプリ」へ|宮城県が目指す協創型DXプラットフォーム
官民で住民とつながる「ポケットサイン」の無限の可能性
地方自治体と住民とのコミュニケーションのDX化を促進するツールとして期待が集まるスマートフォン用自治体公式アプリ。防災をはじめ健康増進や子育て支援、地域ポイント事業など多彩な用途の機能やサービスを内包し、生活の利便性の向上に大きな可能性を秘めています。
宮城県は2023年度(令和5年度)にスーパーアプリ「ポケットサイン」を活用した実証事業にいち早く乗り出し、DX推進のための様々な取り組みを進めてきました。東日本大震災を教訓に、次なる災害時に役立つよう、平常時から住民に広く利用される「地域プラットフォームアプリ」を目指して県庁全体で様々な事業をアプリと連携させる取り組みを進めています。
本記事では、宮城県デジタルみやぎ推進課の担当者に行政とポケットサインによるDXの協働についてお話を伺いました。

(写真:宮城県デジタルみやぎ推進課の熊谷様)
(取材・構成 ポケットサイン株式会社)
「3.11と同じではいけない」という危機感
ーーまず、簡単に自己紹介をお願いします。
熊谷様 はい。2004年度(平成16年度)に宮城県に入庁し、デジタルとは無縁の県庁人生を送っていた中で、2024年1月からデジタルみやぎ推進課に異動してきました。その前は農政部門でしたし、まさかこのようなデジタル化を民間と推進する部署に来るとは思ってもみませんでした。
ーー2023年度に宮城県と弊社はDXに関する実証事業で連携を開始しました。村井知事自ら号令をかけられた取り組みでしたが、熊谷さんはこうした取り組みをどのように受け止めていましたか。
・参考:ポケットサイン株式会社が宮城県と「DX推進のための実証事業に関する連携協定」を締結(2023年4月26日付プレスリリース)
熊谷様 知事がいろんなところで発言している通り、東日本大震災での苦い経験というのがスタートになっています。次に起きる災害に備えて、「前回(3.11)と同じではいけない」という知事の思いは、一職員としても、一県民としても強く共感しています。

ーー3.11当時はどちらの部署にいらっしゃいましたか。
熊谷様 当時は経済商工部門の部署にいました。ちょうどその時、沿岸部に出張した帰り道でしたので、一時、安否不明者(安否未確認者)の中に私がいました。その後、幸いにも自宅周辺は避難が必要なほどの被害はなかったので、帰宅することはできました。
ーー被災地に派遣されたことはありますか。
熊谷様 被災地はなかったですが、県庁の災害対策本部や遺体安置所の受付業務などに応援で携わりました。
ーー宮城県とポケットサインの実証事業は防災(避難支援)から始まったという点は大きなポイントだと思っております。その後、県は防災以外にも普段から使える「公式アプリ」として発展させていますが、どのような課題意識があったのでしょうか。
熊谷様 やはり人間の特性として、いざという時になってからでないと動かないですよね。いざという時でも動かない人もいるぐらいですから。平常時から有事のための備えが万全にできている人は多くはないのではないでしょうか。
アプリの防災機能だけを強調したところで、住民に幅広く普及しないので、普段から何気なく使っていて、有事の瞬間には防災アプリとして使えるということが大切だと考えています。平常時から当たり前に、まさにポケットの中に入れてもらえるという状況が理想です。
ーーそういった展開は最初から決まっていたんですか。
熊谷様 そうですね、初期の段階から全庁的に使っていきましょうという機運があったと思います。私たちのポケットサイン導入の入り口は防災ミニアプリでしたが、ポケットサイン自体は防災専用ではなく、さまざまな用途に展開できる公式アプリですから、「他にも使えるよね」「防災だけだともったいないよね」、そこからさらに「県民のDX基盤にできるのでは」と。
ーー全体を統括される立場として気をつけたポイントはどんなことでしたか。
熊谷様 部署によって温度感や課題感に違いがありました。主体的に課題意識を持ってミニアプリ開発の検討に参加した部署がある一方で、やりたいこととミニアプリの機能がうまく整理できていない部署もあったと思います。
統括する立場としては、そうした部署にも主体的に参画してもらうために関わり方を工夫しました。例えば、月に1回のミニアプリ関係の担当課室と御社との定例会議に毎回出席してもらい、必ず何らかの論点や課題を持ち寄ってもらうようにしました。会議に継続的に出てもらうことで、自然と現場の課題が可視化され、当事者として一緒に前に進める状態をつくれたと感じています。
ーー住民の方への普及施策として効果的だった取り組みは何でしょうか。
熊谷様 最も効果的だったのはみやぎポイント(地域ポイント)の活用です。2024年(令和6年)11月から、アプリをダウンロードして利用登録した人に3000ポイントを付与しました。最初は抽選で8万人を対象としていましたが、登録した全員に付与する方針に切り替えた途端に登録者が急増しました。また、口コミの効果も結構あったようです。
ーー村井知事が先頭に立って「みやぎ県民公式アプリ『ポケットサイン』の登録を」と発信してくださいましたよね。
熊谷様 知事の発信力も後押しになりましたね。県政における最重要課題の1つがデジタル化、DXであり、部局から知事へ事業説明を行う場面(知事レク)では、DX施策の中でも、知事のポケットサインへの関心は特に高いと感じます。知事自身が情報収集してアイデアを提案することもあり、さらなる展開を期待する声が継続的に上がっていました。
ポケットサインの活用は当初、知事からの問題提起がきっかけでした。その後は各部署で検討が進み、知事自身も「最近は職員の動きの方が先に進んでいて、私も学ばないといけないね」と話すことがあります。
ーー行政としてすごく良い状態ですよね。
熊谷様 知事レクの場でも、アプリ導入の最大の目的は災害への備えだという認識が共有されています。その上で「次(の災害)に備えて平常時からの利用を広げておくことが重要だ」という趣旨の発言が繰り返しあり、担当としても背中を押されていると感じます。
アプリを前提とした政策企画の文化に
ーー現在、県民人口の約36%に当たる80万人以上(2026年1月19日現在)がマイナンバーカードと連携させてアプリに利用登録しています。
熊谷様 利用者側でマイナンバーカード連携の価値を感じながら使っている方はそんなに多くないかもしれません。むしろアプリでサービスを提供する側にとって価値が大きいのではないでしょうか。マイナンバーカードによって確実に利用者を認証できるという点を軸にサービスを検討できるのは非常に大きなポイントです。
2025年11月5日から導入した「子育て支援パスポート(ポケットサイン子育て支援)」も、マイナンバーカードを用いて対象者が子育て世帯であることを公的に証明することが肝要ですから。簡便かつ厳格に判定ができるありがたみを、行政サービスを提供する側として実感しています。
・参考:【新プロダクト】マイナンバーカードを活用した子育て支援アプリ「ポケットサイン子育て支援」を開発(2025年11月5日付プレスリリース)
ーー県庁全体で連携してポケットサインの活用を進めるために意識されたことは何でしょうか。
熊谷様 私が着任する前の話になりますが、全庁的な方針としてポケットサインを活用した施策の可能性を各部署で検討し、アイデアを広く募る取り組みを行いました。また、全職員から政策アイデアを募集する庁内コンテストを実施した際には、上位にポケットサインを活用した提案が多く含まれていました。
結果として、従来の検討だけでは見えにくかった県民ニーズに気づくきっかけになり、「現場から提案していく」という動きが庁内に広がってきた効果だと受け止めています。
ーーポケットサインがプラットフォームになり得るスーパーアプリだからこそ、今では様々な課室がミニアプリを活用するに至っているわけですね。
熊谷様 最近は私たちの方から「こういった施策を検討しているのですが、ポケットサインで実現可能ですか?」と御社に相談や提案をさせていただくことが増えています。検討途上のものもありますが、ポケットサインの活用を前提にデジタル施策を考えるという発想が庁内に広がってきている証しだと思っています。
また、システム導入を進める際には所定の庁内審査プロセスがあるのですが、その過程でも「これはポケットサインを通じて周知や展開ができるのではないか」といった観点で検討するようにもなってきています。また、財政部門からも「これはポケットサインで対応できないか」という助言が出ることがあり、部局横断で活用が検討される場面が増えていると受け止めています。

ーー宮城県はレンタルスペースの予約サービスを展開している株式会社スペースマーケットさんが提供するspacepad(スペースパッド)と連携したアプリの導入を検討されているなど、アプリによるサービス拡大に取り組まれています。
熊谷様 県としてのニーズと、市町村等の現場ニーズの双方を整理したうえで、関係者それぞれにとってメリットのある形で一緒に取り組める枠組みづくりを進めています。県、市町村、民間事業者と立場こそ異なりますが、目指す先は最終的に県民の利便性向上である点で共通しています。
一方で、県庁が県民へ直接的にサービスを提供する機会は限られており、普段から接点を多く持つのは市町村や民間事業者です。ポケットサインを県内に広く浸透させていくためには、県庁単独の取り組みだけではなく、県民により近い主体と連携して利用機会を増やしていくことが重要だと考えています。こうした官民連携の取り組みは、今後さらに広げていきたいと思います。
ポイント事業を中心に「100万人アプリ」へ
ーーポケットサインアプリが県民の30%以上に普及した頃から、他の事業者から連携に関して県に声がかかり始めたと伺いました。民間事業者からの問い合わせは増えているのですか。
熊谷様 民間事業者側からは、ポケットサインを通じて利用者ニーズに応じた情報やサービスを提供できる点に関心を持っていただき、「連携して事業をしたい」といった相談を受ける機会が増えています。県としても、単純計算で80万人超の利用者に対し、属性や状況に応じた情報やサービスを個別に届けられますので、こうした基盤をどう有効に活用できるかは大きなテーマだと捉えています。

企業さん側のチャンネル、リソースを活用してアプリの利用機会を広げられるという点は、行政側にとっても意義があります。行政だけでは十分に届けきれないサービスや価値もありますので、官と民がそれぞれの強みを活かし、役割や機能が重複しない形で相互に補完できる連携を進めていければと考えています。
ーー弊社やポケットサインへの期待や要望があればお伺いしたいです。
熊谷様 まず、問い合わせや相談に対して対応が迅速で、状況に応じて柔軟に動いていただける点は、非常にありがたく感じています。加えて、本県と連携しながら市町村のアプリ整備も含め、宮城県全体のDXを進めていくという方向性を、御社と共有できていることも大きいです。
ポケットサインはプラットフォームとして、拡張性が高く、さまざまな施策や用途に展開できる余地があります。実際に、こちらの要望や提案に対して丁寧に検討し、実現に向けて具体的に対応していただいているため、今後も幅広い分野での活用可能性に期待しています。
ーーありがとうございます。身が引き締まる思いです。
熊谷様 あとは、差し出がましいお願いかもしれませんが、われわれは地方自治体という立場ですので、御社や御社の取引先の民間事業者の皆様には、自治体特有の事情や審査の進め方にご理解をいただけるとありがたいと感じています。契約手続きや予算上の制約等から、どうしても意思決定や手続きに時間を要する場面がある点は、自治体に特有の事情だと思います。
ーー今後のアプリの構想や将来像はどのように描いていますか。
熊谷様 アプリ導入の第一の目標は防災です。「ポケットサイン防災」は平常時から訓練や市町村との意思疎通、機能の強化や拡充の検討に取り組んでいますし、県民に対して、災害時の備えとして必要である、有効であると説明して普及に努めてきましたので、いざという時に十分に活用できない、という状況は避けなければなりません。
そのためにも、住民の皆さんに平常時から使っていただくことが重要だと考えています。分かりやすい例が「みやぎポイント」です。ポイント付与には財源が必要になるため、県だけでそれを負担し続けることは困難ですので、市町村や民間事業者の皆さまにもご協力をお願いしながら、ポイントの安定運用を推進していきます。
また、現在県人口のおよそ半数にあたる100万人のアプリ登録を目標としています。その一環として2025年12月にはミニアプリ「みやぎ脳トレ」の提供を開始しました*。これまでになかった娯楽性のあるコンテンツとして、平常時利用の新しいきっかけを提案できると考えています。今後は、他のアプリ関連事業者との連携も含め、平常時利用を促す施策やコンテンツを幅広く展開していきたいと思います。
これらの平常時のサービスの充実により、アプリの認知度は高まっていると感じています。ただ、繰り返しになりますが、アプリ導入の目的は「防災」です。今後は、これまでのような、まずは登録者数を増やすという「普及フェーズ」から、実際にどう使ってもらうか、特に防災機能を平常時から意識してもらえる状態をどう実現するか、という「活用フェーズ」への移行をより強く意識していく必要があると考えています。
みやぎポイントをはじめとした平常時のアプリ利用が、普段からアプリを使っていただく入口として、すでに一定の役割を果たしていると感じていますので、この平時利用を、防災機能の活用へとどうつなげていくかが大きなテーマになります。そのため、今後も様々な媒体を通じて説明に努めていきたいと思いますし、住民避難訓練でアプリの活用訓練を実施するなど、県内市町村とも連携しながら県民への浸透を図っていきたいと考えています。
*参考:宮城県が県民公式アプリで「脳トレミニアプリ」の提供を開始(2025年12月9日付プレスリリース)
ーーありがとうございます。より使われるアプリに育つよう、弊社も全力で取り組んでまいります。
ポケットサイン導入の流れ
ポケットサインは、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)に対応し、地方自治体のさまざまな行政・地域サービスを1つにまとめて提供できるスマートフォン用スーパーアプリです。防災、子育て、地域ポイントなど、暮らしに寄り添う機能をミニアプリやWebサービスとして搭載できます。これにより自治体のサービスや通知を、住民の属性に応じて必要なタイミングでスムーズに届ける(プッシュ通知)こともできます。
マイナンバーカードを用いたスーパーアプリである「ポケットサイン」内のミニアプリです。アプリの導入により、スマートフォンとデジタル身分証を活用した迅速かつ正確な避難支援を実現します。
導入に向けては、当社が自治体ごとの課題・ニーズをヒアリングし、地域創生交付金等の活用を含めてご提案します。広域自治体で包括契約を行い、基礎自治体ごとに必要なミニアプリを契約する形も対応可能です。
▶︎導入に関するお問い合わせは【こちら】
まとめ:自治体DXの新たな形
ポケットサインを活用したミニアプリの導入は、自治体主導のデジタル施策において新たな可能性を示しました。宮城県の成功事例は、他の自治体にも応用可能であり、地域活性化の手段として大きな注目を集めています。
「ミニアプリの活用で、地域活性化の選択肢が広がる」。今後もポケットサインの可能性は広がり続けるでしょう。
▶︎ポケットサインの活用を検討中の自治体担当者の方へ
「ポケットサインのミニアプリで、一歩先のDXを実現しませんか?」
お問い合わせはこちらから: https://pocketsign.co.jp/contact



