2026-02-24
年間4,000件の電話対応を効率化|宮城県が進める道路・河川の維持管理DX
「道路に穴が空いている」「川の護岸が崩れている」。 宮城県では、こうした住民からの通報を年間3,000〜4,000件も電話で受け付けていました。しかし、電話では場所の特定が難しく、職員が広大な現場を探し回ることも少なくありません。
この膨大なアナログ業務を解決するために宮城県が導入したのが、ポケットサインのミニアプリ「インフラ通報」です。 導入によって、場所特定の手間はどう変わったのか。維持管理業者との連携はどうスムーズになったのか。宮城県土木総務課の洞口様に、現場のリアルな変化を伺いました。

(写真:宮城県土木総務課の洞口様)
(取材・構成 ポケットサイン株式会社)
ーーまずは、アプリ導入前の状況について教えてください。これまではどのような体制で県民の方からの通報を受け付けていたのでしょうか。
洞口様 県内には7つの土木事務所があり、道路・河川・急傾斜(がけ)などの維持管理を行っています。これまでは主に電話で通報を受け付けていたのですが、その数は全体で年間3,000〜4,000件にも上ります。毎日どこかの事務所で電話が鳴っているような状況でした。
ーー年間4,000件もの電話対応となると、現場の負担も大きかったと思います。具体的に、どのような点に課題を感じていましたか。
洞口様 電話では現場の状況や場所の特定が難しく、聞き取りに時間を要していました。一般の県民の方は、「県道〇〇線」といった正確な名称や、そこが県道なのか市道なのかをご存じないことも多いです。そのため、口頭で「〇〇川のこのあたり」「近くにこんな店があって…」と説明いただいても、山間部など、目印があまり無いような場所では地図上で場所を特定できないことも多く、職員や維持管理業者が「この辺りだろう」と予想して現地へ向かい、車を走らせて異常箇所を探し回ることも少なくありませんでした。
また、土木事務所の受付は「平日の8時半から17時15分まで」に限られます。夜間や土日に穴ぼこを見つけても、翌開庁日の朝まで通報できないといった点も課題となっていました。

ーー「場所が分からない」「時間が合わない」。電話ならではの限界があったわけですね。そうした課題がある中で、どのような経緯でアプリ導入が決まったのでしょうか。
洞口様 数年前から、宮城県庁全体でDXを推進しており、土木部においても、課題となっていた電話通報の対応にデジタル技術を活用することとしました。その中で、他県や国の事例などを調査し、「場所の曖昧さ」と「受付時間の制約」を一挙に解決するために、スマホのGPSとカメラを活用した通報サービスを導入する方針となりました。
ちょうど同時期の令和5年4月に、宮城県と御社(ポケットサイン)が包括連携協定を結んだことから、ミニアプリとしての開発・導入が進んでいきました。
質問はたった5つ。誰も迷わないUI設計
ーー「インフラ通報」ミニアプリの設計にあたり、こだわったポイントを教えてください。
洞口様 「とにかく入力を簡単にすること」です。通報の手間が増えると、そもそも使っていただけなくなりますから。先行事例を調査した際、入力内容を非常に細かく分類しているアプリもありました。例えば「国道・県道何号線ですか?」と聞いてくるような。でも、住民の方には詳細まで分かりませんよね。
そこで私たちは、現場対応に必要な最低限の情報に絞り込み、質問項目をわずか5つに設定しました。
写真(最大10枚)
対象(道路・河川・急斜面から選択)
状況(テキスト入力)
場所(スマホの位置情報機能で地図ピンで指定)
電話番号(任意)
これだけで十分なんです。GPSと写真があれば、言葉で説明していただかなくても「ピンポイントな場所」と「状況」が伝わります。私たちが現地で探し回る時間は大幅に削減できました。

(「ポケットサインインフラ通報」のアプリ画面)
ーー対象を「道路・河川・急斜面」の3つに絞っているのにも、理由があるのでしょうか。
洞口様 はい。一つは、通報対象のインフラを明確にするためです。「インフラ」には、土木インフラや交通インフラなど様々な種類がありますが、通報を受け付ける県の土木事務所において、公園や鉄道などは管轄外なので、あらかじめ選択肢を絞ることでミスマッチを防いでいます。もう一つは、庁内の振り分けを自動化するためです。
ユーザーが「道路」を選べば道路担当班へ、「河川」なら河川担当班へと、通知が自動的に振り分けられます。これにより、職員が内容を見て転送する手間がなくなり、初動の対応漏れも防げるようになりました。ユーザーには簡単に入力していただけるよう、内部では効率的に動けるよう設計しています。
維持管理業者への「電話リレー」が不要に。リアルタイム連携で迅速対応
ーー「ポケットサインインフラ通報」の導入後、業務フローにはどのような変化がありましたか。
洞口様 ここが一番大きな変化なのですが、県職員だけでなく、補修などを行う維持管理業者にもシステムのアカウントを付与したんです。これまでは、電話で受けた内容を職員がメモし、地図で場所を特定して整理してから、維持管理業者に電話で「ここに行ってください」と依頼していました。いわば「伝言ゲーム」のような状態で、どうしてもタイムラグが発生していました。
現在は、通報が入ると自動的に担当の土木事務所と種別(道路班・河川班など)に振り分けられ、同時に維持管理業者の管理画面にも通知が届きます。

(管理画面では、通報箇所の地図と現場写真を即座に確認可能)
ーー県からの指示を待たずに、維持管理業者さんが状況を把握できるわけですね。
洞口様 その通りです。アプリ上で通報された写真と位置情報を見れば状況が一目瞭然なので、維持管理業者が自律的に現場確認や資材の準備に入れます。県から通報内容を説明する手間が省け、対応スピードは確実に上がりました。
ーー維持管理業者さん側からの反応はいかがでしたか。
洞口様 非常に好評です。さらに、維持管理業者がパトロール中に見つけた異常を、このアプリを使って県に報告してもらうといった活用もしています。
これまで事務所に戻ってから写真を整理し、報告書を作っていたのが、現場からのスマホ送信で完結するので楽になったと。本来は県民向けの機能ですが、維持管理業者の業務効率化にもつながったのは、嬉しい誤算でしたね。
「信頼性」は高く、導入ハードルは低く
ーーポケットサインの特徴である「マイナンバーカード連携」については、どう感じていらっしゃいますか。
洞口様 やはり、身元が確かなID(マイナンバーカード)に基づいているため、情報の信頼性が高いですね。導入から約2年経ちますが、いわゆる「いたずら通報」は見受けられません。一方で、通報者のプライバシーにも配慮しています。システム上、通報者の氏名や住所は取得できますが、それを閲覧できるのは「県職員」のみに制限しており、維持管理業者の画面には現場の写真や位置情報しか表示されません。「匿名通報」も選択可能にしていますし、個人情報の保護と業務効率化のバランスがうまく取れていると感じます。

ーー機能面での信頼性だけでなく、導入の「コスト」や「開発期間」についてはいかがでしたか。
洞口様 御社にはこちらの要望を柔軟に受け止めていただき、「一緒に作り上げていく」という感覚がありました。開発スピードも速かったです。何より、スーパーアプリの中の「ミニアプリ」という形態なので、単独でゼロから開発するよりも低コストで運用できています。予算が限られる自治体にとって、導入のハードルが低い点は非常にありがたいですね。
スーパーアプリで広がる「地域の見守り」。災害時の活用も見据えて
ーー現在、どのくらいの方がアプリを利用されているのでしょうか。また、反応はいかがですか。
洞口様 現状では通報全体の約1割がアプリ経由です。まだまだ電話も多いですが、少しずつ浸透してきています。ここで大きいのが、ポケットサインが「スーパーアプリ」であるという点です。
インフラの異常を発見した際に、どうやって通報すれば良いか分からない方もいるかと思いますが、例えば、「みやぎポイント」や「防災」を目的にポケットサインのアプリを入れた方が、ホーム画面でこの機能を見つけて「あ、ここから道路の通報ができるんだ」と気づいて、利用登録いただいている方も多いかと思います。単体の通報アプリでは関心を持たなかった層にもリーチできるのは、様々なミニアプリがあるポケットサインならではの強みですね。

(みやぎ県民公式アプリ「ポケットサイン」のホーム画面。インフラ通報の他にも様々なミニアプリが並ぶ)
また、このミニアプリは、ボランティアで道路管理に御協力いただいている県庁OBの方々にも活用していただいています。
2023年には、県庁でその方々向けの説明会も実施しました。現在も年2回ほど、半期ごとの通報件数などの情報を共有しながらやり取りを続けているのですが、継続的に熱心に取り組んでいただいています。退職後も自らの活動として、県への情報提供を一生懸命やってくださっているのは、本当にありがたいですね。
使いやすいUI(ユーザーインターフェース)であれば、スマホ操作に不慣れな世代でも十分に活用していただけることを実感しました。

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
洞口様 幸いなことに、本県では導入してから大規模な災害は起きていませんが、災害時こそ、このシステムが真価を発揮すると考えています。災害直後、職員ができる限り早く県内すべてのインフラを見て回る訳ですが、そんな時、住民の皆さんから写真付きの位置情報が届けば、災害対策本部で「ここは緊急性が高い」と優先順位をつけて早急に対応することもできると考えられます。 現在は平時の活用がメインですが、いざという時の防災・減災ツールとしても機能するよう、引き続き検証を進めていきたいですね。
ポケットサインインフラ通報とは

マイナンバーカードと連携するスーパーアプリ「ポケットサイン」内のミニアプリです。住民が発見した街中のインフラ異常を、スマートフォンで簡単に24時間通報でき、自治体の「スマートな通報管理」を実現します。
特長1:ラクラク通報管理
アプリからの通報は管理者画面で一元管理。地図の位置情報と異常の種類から、関連部署へ自動で振り分けが可能です。特長2:正確な状況把握
写真と地図情報がセットで届くため、電話では伝わりにくい詳細な状況を、職員や業者が瞬時に把握できます。特長3:信頼性の確保
デジタル身分証と連携しているため、悪意のある通報を抑制。安心して運用いただけます。(匿名での通報も可能です)
まとめ:自治体DXの新たな形
ポケットサインを活用したミニアプリの導入は、自治体主導のデジタル施策において新たな可能性を示しました。宮城県の成功事例は、他の自治体にも応用可能であり、地域活性化の手段として大きな注目を集めています。
「ミニアプリの活用で、地域活性化の選択肢が広がる」。今後もポケットサインの可能性は広がり続けるでしょう。
▶︎ポケットサインの活用を検討中の自治体担当者の方へ
「ポケットサインのミニアプリで、一歩先のDXを実現しませんか?」
お問い合わせはこちらから: https://pocketsign.co.jp/contact
