Case study

導入事例

2026-03-25

熊本市が描く「ボランティア×ポイント」の支え合いモデル

地域コミュニティを活性化しポイントで地産地消を促進

全国的に人口減少と少子高齢化が進む中、地域で活動を支える「担い手」の不足は、熊本市においても課題となっています。地域社会を支える力を維持し、住み慣れたまちで誰もが安心して暮らし続けるためには、そこに暮らす多様な人々が主体となり、互いの文化や価値観を尊重しながら助け合う地域コミュニティの機能維持が不可欠です。

熊本市では、こうした地域コミュニティの機能を維持・強化するため、市民一人ひとりが社会とつながり、地域活動に参加しやすくなる仕組みづくりを進めています。

それが、地域活動とインセンティブを掛け合わせた「くまもとアプリ」の取り組みです。 本記事では、2025年10月に行われた清掃ボランティアの模様をお伝えするとともに、地域企業を巻き込んでポイント事業を構築した熊本市のDX事例を紹介します。

活動証明書とポイントが若者を動かしたボランティアの現場

2025年10月26日、熊本市中央区。前無田阿蘇神社に隣接する公園は活気に包まれていました。 出水南校区第6町内自治会が主催した清掃活動。ここ数年は高齢の住民が中心でしたが、この日は高校生や大学生の姿がありました。

「毎回違うことができて楽しそうだなと思い、ボランティアに参加しました。福岡から進学で来て、いま住んでいる街をよく知るきっかけになればと思って」

参加した女子大学生(18歳)は、きれいになった公園を眺めながら満足そうに話しました。

この清掃作業は、熊本市中央区の出水南校区第6町内自治会が受入団体となり、ボランティアを募集して行われました。その募集から参加者管理、そして参加者への地域ポイント付与といったオペレーションのインフラとなったのが「くまもとアプリ」です。冒頭の女子学生もアプリを通じて応募し、参加したのでした。

くまもとアプリは、2016年の熊本地震の経験を踏まえ、熊本市が平時と災害時の両面で活用できるスマートフォン用公式アプリとして2024年3月から提供しています(下図)。

(くまもとアプリの画面イメージ)

様々なミニアプリを実装しており、平時はアプリ上で地域活動やボランティア活動の参加者にインセンティブとなる地域ポイントを付与し、活動証明書を発行します。災害時には、避難所の受付や災害ボランティアの受入などに活用されます。

地域活動のボランティアを募集する際、従来は手段が回覧板などに限られていたため、どうしても応募が町内の高齢者に偏っていました。このため、いかに若い世代に自治会活動に参加してもらうかが重要な課題となっていました。

それをくまもとアプリのボランティアミニアプリの活用で克服しようとしています。自治会長の男性は「アプリを使うことで、若い人や若い家族が町内の活動に参加してくれるようになりました。春の一斉清掃では、高校生や大学生、市の職員など、いろんな方々がアプリを見て応募してくれて、とても助かりました。まだまだ工夫と改善の余地がありますけど、将来的にはとても有効だと思います。本当にいいアプリです」と語ります。

(アプリで公開されたボランティア募集の画面)

今回の清掃作業でも、冒頭の大学生を含め、若い人たちの姿がありました。

また、くまもとアプリは、ボランティア活動証明書の発行にも対応していて、進学や就職活動に活動証明書を利用したい若者に参加をはたらきかけるインセンティブになっています。

ボランティア活動証明書が発行されることもあって、参加しました。大学の推薦入試に使うつもりです。くまもとアプリは、普段使っているTikTokやInstagramと同じように、分かりやすかったですね」(高校2年男性)

参加者はアプリにマイナンバーカードを使って利用登録するため、市が発行するボランティア証明書は真正性が保証されます。入試などで公的な証明として利用される例もあります。

(一カ所にまとめられた木の枝や雑草など。公園は見違えるほど綺麗になった)

なお、今回のボランティアの様子はRKK熊本放送の市政広報番組で放送され、市の公式YouTubeでも公開されています。

ポイント原資は協賛企業と市の各部署の協力から

少子高齢化と人口減少が続くなか、熊本市は「持続可能な地域団体」の実現を目指しています。そのためには地域コミュニティの活性化が必要不可欠であり、本記事の冒頭で紹介した若者を地域コミュニティの活動に巻き込むためのボランティアアプリと地域ポイントである「くまもとポイント」事業はその一環です。

アプリ経由でボランティアに参加した人には、インセンティブとしてくまもとポイントが付与されますが、このポイント事業にも持続可能な地域団体を実現するための工夫がこらされています。

「ポイント事業」と聞くと、多くの場合は地方自治体が財源の確保に四苦八苦する様子を想像するのではないでしょうか。その点、熊本市のスキームが画期的なのは、ポイントで交換できる景品を、令和7年度は協賛企業からの協力や、熊本城などの市の各部署の協力で賄っている点にあります。

くまもとアプリで貯めたポイントの主な交換先は、アプリ内で行われる抽選会です。令和7年度に開催されたクリスマス抽選会に出品された景品は、多くが協賛企業等による協力(協賛)で確保されました。市からは、熊本城天守閣のカラーライトアップ体験などの、プレミアムな体験も含まれています。

地元企業にとってはCSR活動やPRの場となり、行政にとっては予算の制約を受けずに住民サービスを拡充でき、市民をはじめとするアプリ利用者は貯めたポイントを「地産地消」に活用することで持続可能なまちづくりの実現に貢献できるという三方よしの仕組みと言えます。

なお、市は現在、ポイントを協賛店舗で使える電子クーポンと交換できるよう準備を進めており、抽選会以外の用途の開拓に余念がありません。

また、住民がくまもとポイントを獲得する機会は、ボランティアの他にも以下のものがあります。

  1. ボランティア参加:地域活動への対価

  2. 初回登録:導入のハードルを下げる

  3. 毎日のログイン:1日1回1ポイントの付与で継続的な利用を促す

  4. キャンペーン:ダウンロード記念など不定期に開催

このうちボランティア参加が最も多く貯まる方法になっています。

(会場に掲示された2次元コードをアプリで読み取ると地域ポイントが付与される)

アプリ経由で4,042人がボランティア参加

以上見てきたとおり、持続可能なまちづくりの基盤となる「くまもとポイント」は、くまもとアプリのボランティアミニアプリと切っても切り離せない関係です。そして、ミニアプリは順調に参加者数を増やしています。

2024年4月以降、アプリ経由で実施されたボランティア活動は388件あり、活動した人数は4,042人に上ります(下図)。

熊本市内在住者だけでなく、市外からの参加者が23.1%と4分の1近くを占めており、アプリを通じて募集できる強みが表れているといえます。

また、幅広い世代が活動に参加している点も特徴です(上図円グラフ右)。10代が19.1%、20代が11.4%を占め、40代以下が計55.1%と過半に達しています。市や町内会の狙いである、若い層によるボランティアへの参加が十二分に促されており、自治会活動の持続可能性に大きな期待が持てる状況になっているのです。

「高齢者にも使いやすいアプリに」と担当職員

一方、アプリを導入した熊本市も手応えを感じています。2025年10月26日の清掃作業に立ち会った熊本市地域政策課主査の宮崎さんに話を伺いました。

(熊本市の広報番組の収録に臨む参加者や市職員たち)

ーー熊本市がアプリを運用しようと考えたきっかけを教えてください

「自治会活動は特定の人に頼りがちで、担い手不足が課題でした。だからこそ、まず多くの人が参加できるきっかけを作る必要があると思ったんです」

「くまもとアプリはボランティア参加への入り口として最適でした。若い世代の人が応募して来てくれて、地域の人とつながり、継続的に参加してくれるようになれば、自治会活動も特定の人に偏らず広がっていくと思います」

ーーボランティアのミニアプリのUIUXや利用者からの声について、印象に残っていることはありますか。

「私は2024年に中央区まちづくりセンターでミニアプリの実証実験を担当させていただきました。実際に使ってみて良かった点は、朝の見守りボランティアに高校生や大学生が参加してくれたことです。自治会の方々と学生さんとのつながりができてとても良かった、と自治会の方もおっしゃっていました」

ーー逆に、難しいと感じた点はありましたか。

「自治会は高齢者が多く、2次元コードを提示する操作などに慣れていない方が多かったですね。最初は誰かがサポートしないといけない、というのが課題でした。自治会長の平均年齢が約72歳なので、導入時の支援をしていく必要があると感じました」

ーーサポートさえあれば、高齢の方でも使いこなせそうですか。

「はい、そう思います。そして、入力項目や操作性をもっとシンプルにすれば、より使いやすくなると思います」

ーーアプリ運営側、つまり自治体として「こういう機能があれば便利だな」と思う点はありますか。

「くまもとアプリは通知機能で一方的な発信(プッシュ通知)はできるんですが、ボランティア参加者からの問い合わせを受けるには、参加者に連絡先をアプリ内に書いてもらう必要があるんですよ。なので、双方向のやり取りができるようになればいいな、という声は以前からありました」

ーー参考にさせていただきます。今後の理想的な活用イメージや改善の方向性などはありますか。

「やはり多くの人が使えることが一番大切だと思います。特に高齢者の方にも使いやすいアプリにすることが重要です。自治会のボランティア活動を担っているのは高齢者の方が多いので、そういう方々にとっても分かりやすいアプリであることが理想ですね」

地域見守りでは応募者の身元確認ニーズも

アプリには新たな課題も見えてきました。ボランティア活動の内容によっては、参加者を居住地域や年齢などによって絞り込みたいというニーズもあります。一例が小学生の登下校誘導ボランティアです。

現在は公開すると誰でも応募できる仕組みのため、アプリで属性による応募条件の設定ができる機能改善が求められています。

自治会長の男性は、「防犯や子どもの見守り活動は、町内である程度身元が分かる人たちを対象にしないといけません。 オープンに募集できる活動と、限定する活動とで応募者をふるい分けできるとすごく便利ですね」と話しています。

技術基盤である「ポケットサイン」の強み

多彩なミニアプリを搭載可能

くまもとアプリは当社ポケットサインが開発するスーパーアプリ「ポケットサイン」を基盤として熊本市から利用者へ提供されています。この章ではポケットサインの特長についてご紹介します。

ポケットサインは、マイナンバーカードを活用して住民と行政・地域企業を結ぶオープンなプラットフォームです。ユーザーは電子署名で登録し(個人番号=マイナンバーは登録しません)、生涯1人1アカウントを持ちます。住所や氏名が変わっても自動的に更新されます。

また、アプリが関連する二次元コードの読み取りに対応し、防災や地域ポイントなど、暮らしを支える多彩な機能をミニアプリとして組み込むことができます(下図はミニアプリ一覧)。

活動参加だけでなくボランティア募集も

ポケットサインのOEMであるくまもとアプリでは、マイナンバーのほかにメールアドレスでの登録にも対応することで、市民以外のボランティアも広く利用できる仕組みを整えています。

【主な機能】

  • 避難所受付のデジタル化:避難所でQRコードを読み取り、アンケートに回答することで、迅速な受付が可能に

  • 避難状況の記録・共有:市民が避難状況をアプリに登録でき、熊本市が情報を一元管理し、より的確な支援を提供

  • ボランティア活動の情報提供:地域の活動やボランティア情報の検索・参加申込が可能。活動実績がアプリに記録される

  • ポイント制度:ボランティアや地域活動の参加でポイントが付与され、抽選への参加や協賛店舗でのクーポン交換が可能に

特にボランティアに関しては、くまもとアプリから地域活動等を検索して、参加申し込みができます。参加すると「ボランティア活動証明書」が発行され、進学や就職、ボランティア休暇の申請などさまざまな場面で信頼性の高い証憑として活用できます。

さらに、活動参加によって地域ポイントである「くまもとポイント」を獲得できます。獲得したポイントは、くまもとアプリ内での抽選会への参加券や電子クーポンに交換できます。

また、地方自治体や各地の自治会などの地域団体は、くまもとアプリを利用して地域活動に参加するボランティアを募集することができます。ただ募集するだけでなく、参加者にはくまもとポイントが貯まるメリットがあるため、健全なモチベーションアップにもつながります。

自治体公式アプリならポケットサイン

ポケットサインは、以上見てきた地域ボランティアだけでなく、防災やインフラ通報、保育、タクシー利用券など幅広い住民サービスに活用できます熊本市のようにOEM提供も可能です。

さらに、スーパーアプリでありながら、他社がポケットサイン上にミニアプリを構築・連携できる仕組み「PocketSign Link」も整備しています。

これにより、利用者はID連携を通じて異なるサービス間をスムーズに行き来できます。たとえば健康ウォークの歩数に応じてポイントを付与するといった機能も実装が可能となり、単なるスーパーアプリにとどまらず、住民の利便性向上や地域活性化を支えるプラットフォームとしても幅広く活用されています。

また、各自治体が既に導入している別のスマートフォンアプリやWebサービスを起動するリンク(ボタン)を、ポケットサインの画面上に配置することもできます。ポケットサイン利用者は、LINEの自治体公式アカウントや地域通貨などの個別アプリへシームレスに遷移できます。

ポケットサインの導入事例やサービス概要をまとめた資料を下記リンクよりダウンロードいただけますので、スーパーアプリや地域DXにご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。

▼自治体向け「ポケットサイン」資料ダウンロードhttps://pocketsign.co.jp/contact/download/government

▼ポケットサインについてはこちら
https://pocketsign.co.jp/

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ポケットサイン株式会社は、次世代のデジタルプラットフォームをつくる企業です。
「信用の摩擦をゼロにする」をミッションに人々が本来やりたかったことに集中できるような環境を作り、生産性を高め、より良い社会を築くことを目指しています。

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