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AXとは?DXとの違いから、行政・自治体で始まるAI活用について解説 

2026-09-04

人口減少が進むなかで、自治体には「職員を増やさずに住民サービスの質を保つ」という難題が突きつけられています。その解決策として、いま国が前面に押し出しているのが「AX(AIトランスフォーメーション)」です。2026年7月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、AIを前提に行政のあり方そのものを見直す方針が明確に打ち出されました。

とはいえ、AXという言葉を聞いても「DXと何が違うのか」「自治体の業務にどう関わるのか」がつかみにくいという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、AXの定義とDXとの違いを整理したうえで、国が描く行政サービスの将来像と、その実現に欠かせない基盤について解説します。自治体でDX・AI活用を担当されている方に向けた内容です。

目次

AX(AIトランスフォーメーション)とは?

AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを前提として組織のあり方や仕事の進め方を根本から作り変える取り組みです。2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、AXを「あらゆる組織で、AIを前提として意思決定や業務の進め方を根底から見直すこと」と定義しています。既存の業務にAIツールを足すことではなく、「AIがある前提で仕事をどう組み直すか」が問われているということです。

この定義は政府内で一致しています。1週間前の7月14日に閣議決定された「人工知能基本計画」も、まったく同じ表現を用いています。民間では「AIによる競争優位の確立」といった語られ方もされますが、政府としての定義は固まっています。

参考:
デジタル庁|デジタル社会の実現に向けた重点計画(2026年7月21日閣議決定)
内閣府|人工知能基本計画(2026年7月14日閣議決定)

AXとDXの違い

DXについては、経済産業省が「デジタルガバナンス・コード3.0」で「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

AXとDXは、変革の中心に何を置くかが異なります。両者の違いを整理すると次のようになります。

観点

DX

AX

中心にある技術

デジタル技術全般

AI

変革の対象

業務・サービス・組織

意思決定と業務の進め方そのもの

人とシステムの関係

人がデジタルを使いこなす

人とAIが役割を分担する

行政における例

申請手続をオンライン化する

AIが手続を案内・代行する

※本表は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(デジタル庁、2026年7月21日閣議決定)および「デジタルガバナンス・コード3.0」(経済産業省、2024年9月19日改訂)をもとにポケットサイン株式会社が作成

紙の申請書をオンライン申請に置き換えるのがDXだとすれば、AXはそもそも住民が申請書を探して記入する必要があるのかという前提から問い直します。

ただし国は、両者を対立するものとして扱っていません。重点計画は「DXも活用し、AIの利活用を一体的に推進するAX」と表現し、まとめて「AX/DX」と表記しています。標準化やクラウド移行といったこれまでのDXの取り組みは、AXの土台としてそのまま生きます。

なぜ今AXが求められるのか

背景にあるのは、行政サービスの担い手が構造的に足りなくなるという見通しです。重点計画によれば、生産年齢人口は2050年までに2025年比で約25%減少し、2040年にはAIやロボットを使いこなす人材が約340万人不足すると推計されています。人手が減るだけでなく、AIで補おうにもその担い手が足りないという二重の課題です。一方で世界の生成AI市場規模は、2022年の約2兆円から2030年には50兆円以上に達すると見込まれています。

自治体の現場でも導入は進んでいます。総務省の調査によれば、2025年10月31日時点で生成AIを導入済みの団体は都道府県・指定都市で100%、その他の市区町村で45.6%。実証実験中や導入予定・検討中を含めると約88%が導入に向けて動いています。

一方で、課題として最も多く挙げられたのは「AI生成物の正確性への懸念がある」でした。導入するかどうかではなく、出てきた答えをどこまで信用できるかが論点になりつつあるということです。

参考:総務省|自治体における生成AI導入状況(令和7年度)(2026年4月24日公表)

政府が掲げる「AI駆動型国家」とAX/DXの推進

重点計画がAXの先に据えている目標が「AI駆動型国家」です。計画では、AIエージェントの徹底活用を通じて「自律型」「提案型」の行政サービスを実現することを掲げています。

住民が窓口や検索を通じて自ら情報を探しに行くのではなく、必要な支援が必要なタイミングで届く行政へ。この転換を国全体で進める方針です。

同じ方向性は、その1週間前に閣議決定された人工知能基本計画(第Ⅱ期)にも表れています。副題はそのものずばり「日本AX、より強く、より豊かに」。AI政策の根幹をなす法定計画が、AXを国家戦略の中心に据えました。

同計画では、自治体に向けた取り組みとして「AIによる自治体業務の構造変革(自治体AX)」という言葉が明記されました。オンライン完結の仕組みの導入や業務の自動化を進め、優良な事例を横展開する方針です。政府職員向けに展開されているガバメントAI「源内」についても、オープンソース化を通じて自治体のAI導入を支援するとされています。

AX/DX推進の4本柱

重点計画は、課題の変化に対応するための取り組みを4つの柱で整理しています。

  • 国のAX/DX基盤の高度化・強靱化:政府共通業務の効率化、AI・システムの活用推進

  • 自治体のAX/DX基盤の高度化・強靱化:基幹業務システムの標準化を土台とした自治体業務の変革

  • 国民の暮らしのAX/DX推進:マイナンバーカードの利用拡大、暮らしに身近な分野のデジタル化

  • AX/DXの徹底的推進による経済成長の加速:産業分野でのAI活用と生産性向上

この4本柱に加えて、サイバーセキュリティの確保、デジタル人材の確保・育成、デジタル・AIへの受容性の向上、デジタル行政の推進体制整備が、横断的な取り組みとして位置づけられています。

自治体にとって特に関わりが深いのは、4本柱のうち2つ目と3つ目です。2つ目は職員が担う業務の側、3つ目は住民が受けるサービスの側にあたります。

このうち自治体のAX/DX基盤には「AIエージェントを利用した『自律型』『提案型』行政サービスの実現に向けた取組」が明記されており、具体的には、自治体の共通ソフトウェアを効率的に開発できるベンダー向け開発基盤の検討、申請情報などの自動連携による手続のワンストップ化、給付金などの制度をコンピュータが読み取れる形にする「Rules as Code」の推進が挙げられています。

基幹業務システムの標準化やガバメントクラウドへの移行は、すでに約7割のシステムで完了しています。これまで進めてきたDXの成果が、AXの土台として位置づけられている構図です。

行政サービスはどう変わるのか|「自律型」「提案型」への転換

重点計画では、住民・国民への行政サービス提供について、時期を区切ったロードマップが示されています。ここが本記事で最も注目したい部分です。

短期にあたる2年以内には、自治体向けサービスの共通開発基盤の整備や、申請インターフェースの標準化といった土台づくりが位置づけられています。バラバラだった仕組みを揃える段階であり、これはDXの延長線上にある取り組みです。

変化が大きくなるのは、その次の段階からです。

中期(5年以内)|AIエージェントが住民相談などフロント業務を代行する

国の取組として5年以内を目途とされている中期の段階では、AIが扱える形に整えられた住民データと、コード化された制度(保育、税など)を基盤として、AIエージェントが住民相談などフロント業務の多くを代行する姿が描かれています。相談の「ワンストップ化」も同時に進める方針です。

ここには、住民が持つ証明情報をVC(検証可能なデジタル証明情報)として扱い、遠隔で提供できるようにする取り組みも含まれます。住民票などの証明書を役所の窓口で受け取って提出するのではなく、遠隔で属性や資格を証明できるようにするという考え方です。

窓口に来た住民に職員が説明する、という業務の一部をAIが担う。そのために必要なのは、AIが制度を理解できることと、目の前の住民の状況を把握できることの2つです。ロードマップは、この両方を同時に整備する構成になっています。

2030年代半ば|手続負担なく必要な支援が届く姿へ

ロードマップが2030年代半ばころに目指す姿として掲げているのは、一人ひとりの住民がAIエージェントの助けを得て、必要な時に必要な支援を手続き負担なく享受できる状態です。

そしてこの将来像は、住民側だけの話ではありません。同じロードマップには、人材不足の深刻化に直面する自治体にとっても、少人数の職員で高品質な行政サービスを持続的に提供でき、システムの運用・保守を効率的にできる社会を目指す、と明記されています。住民の利便性と職員の負担軽減は、同じ取り組みの表と裏として設計されているということです。

構造としては、住民が自分のAIエージェントを介して行政手続のオンライン窓口とやり取りし、その基盤にマイナンバーカードや各種VC、証明書の電子交付が置かれる形が示されています。国民や企業のAIエージェントが行政のシステムへ安全にアクセスするための仕組み(MCP等)の検討も、計画に盛り込まれています。

制度を調べ、該当するかを判断し、書類を揃えて申請する。この一連の負担を住民から取り除きつつ、職員の側の負担も減らすことが、行政におけるAXの到達点として設定されているということです。

AIエージェント時代の前提となる「本人確認済みのデジタルID」

先に見た4本柱には、庁内業務の効率化や産業分野でのAI活用も含まれます。そのうえでここからは、住民と行政の接点にしぼって話を進めます。

ロードマップが描く姿を実現するうえで、避けて通れない論点があります。AIが住民の代わりに動くとき、その相手が誰なのかをどう確かめるのか、という問題です。

【課題】AIが代行するほど生じる「相手が誰か分からない」問題

一般的なAIチャットは、相手が誰か分からないまま応答します。そのため回答はどうしても一般論になります。「子育て支援について教えてください」と尋ねても、全国どこにでも当てはまる説明が返ってくるだけで、自分が実際に使える制度かどうかは分かりません。

行政サービスでこれは決定的な弱点になります。使える制度は住んでいる市区町村によって異なり、年齢や世帯の状況によっても変わるためです。住民が本当に知りたいのは「自分は何を使えるのか」であり、そこに答えるには相手の属性を把握している必要があります。先ほど触れた「AI生成物の正確性への懸念」も、根拠のない一般論が返ってくることへの不安と地続きです。

さらに、AIが案内にとどまらず申請の代行まで担うようになれば、相手が本人であることを確実に確かめる仕組みが不可欠になります。AIが行政サービスの手前に立つ時代ほど、その土台となる本人確認の重要性は増していきます。

公的個人認証サービス(JPKI)とは

この課題に対する現実的な答えが、マイナンバーカードを使った公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure)です。以降「JPKI」と表記します。

JPKIは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を用いて、オンラインで本人であることを確認できる公的な仕組みです。認証基盤としてのマイナンバーカードは人口の8割超に普及していると整理されており、マイナポータルの利用登録者数も2026年3月時点で約8,500万人に達しています。全国規模で使える本人確認の基盤が、すでに整っているということです。

重点計画のロードマップでも、AIエージェントが行政手続を担う将来像の基盤として、マイナンバーカードが位置づけられています。AIの活用と本人確認の仕組みは、別々の話ではなく地続きの課題として設計されているのです。

なお、この構造は行政に限った話ではありません。AIが個人に代わって手続や取引を行う場面が広がれば、民間サービスにおいても「相手が誰かを確かめたうえでAIが応答する」仕組みが求められることになります。

事例:宮城県|JPKIと生成AIを組み合わせた住民向けサービス「AIみやぎ県」

当社が提供する自治体公式アプリ「ポケットサイン」は、宮城県でみやぎ県民公式アプリとして導入されており、県民の2人に1人にあたる120万人超が登録しています。

この県民とのデジタル接点を生かし、2026年9月2日から「AIみやぎ県」として、回答対象となる分野を限定して段階的に提供を開始します。

利用状況や県民からの意見、宮城県からの要望をもとに、回答精度や対象分野、使いやすさを継続的に改善し、2027年1月からの本格提供を予定しています。

住民向けの案内をAIで担うだけでなく、そこで集まった質問や評価を行政情報の改善につなげる。宮城県との取り組みは、住民サービスと行政業務の両方をAIを前提に見直していく、自治体AXの実践例といえます。

AX時代の行政サービスなら「ポケットサインAI窓口」

当社は今後、マイナンバーカードのJPKIと生成AIを組み合わせ、行政手続きの申請支援や、ライフサイクルや興味関心に応じたプッシュ型の行政案内など、自治体と住民のさまざまな接点を担うAIサービスを順次展開していく方針です。

その第一歩となるのが、住民の相談・案内を支援する自治体向けAI窓口サービス「ポケットサインAI窓口」です。JPKIによる本人確認と連動し、利用者の属性に応じて回答を最適化する住民向け生成AIサービスとしては、全国初の取り組みとなります(2026年8月時点、当社調べ)。

既存の行政サービスにAIチャットを追加するだけのものではありません。住民が行政情報を探す体験と、自治体が住民のニーズを把握して情報やサービスを改善する業務を、AIを前提に再設計していく取り組みです。

サービスは、住民向けの利用窓口と、自治体職員向けの管理コンソールで構成されます。住民向けの窓口は、自治体公式アプリ「ポケットサイン」内のミニアプリです。管理コンソール自体にも業務支援AIを活用しており、職員の運用支援まで含めて一体で提供する構成です。

特徴1:確かな本人確認により、一人ひとりに合った案内を実現

前章で見たとおり、AIが一般論しか返せないのは、相手が誰か分からないためです。本サービスはその前提を、マイナンバーカードによる本人確認で解決します。

具体的には、同じ利用者であることを継続的に識別するための情報と、基本4情報から必要な形に加工した属性情報を組み合わせます。これにより、市町村や年代などの属性に合わせた回答を、自治体が公開する行政情報の中から自動で案内できます。利用者が毎回同じ条件を入力し直す必要はありません。

さらに、対話の内容を必要な範囲で記憶する「メモリ機能」を備えています。質問を重ねるほど、その人の関心や状況を踏まえた案内に近づいていきます。行政情報を調べるたびに自分の状況を説明し直す、という負担をなくす仕組みです。

当社は、公的個人認証サービスにおけるプラットフォーム事業者として主務大臣の認定を受けており、宮城県、山形県、北海道、京都市、熊本市、静岡市など幅広い自治体でJPKIを実装・運用してきました。その実績と独自の技術を組み合わせて実現した設計で、中核となる技術については特許を取得しています(特許第7880510号)。

特徴2:個人情報をAIに渡さず、根拠を示して答える安全設計

自治体が生成AIの導入で最も課題に挙げているのは、記事の前半で触れたとおり「AI生成物の正確性への懸念」でした。本人確認で属性を扱うとなれば、個人情報の取り扱いも同時に気になるところです。本サービスは、この2つに設計で答えています。

まず、本人確認を経て取得した氏名・住所・生年月日・性別が、そのまま生成AIに渡ることはありません。生成AIが受け取るのは「〇〇市にお住まいの30代の方」のように、個人を特定できない形に変換した情報だけです。つまり生成AIは「あなたが誰か」を知らないまま、あなたに合った回答をつくります。マイナンバー(個人番号)は一切取得・利用しません。

回答の正確性については、根拠となる自治体のWebページをあわせて表示します。利用者は、答えのもとになった行政情報を自分で確認できます。根拠となる情報が十分にない場合は、無理に回答を生成せず、誤った情報の案内を抑制します。あわせて、不適切な質問やサービスと関係のないメッセージを検知して回答を行わない「入口ガード機能」も備えています。

当社はISO/IEC 27001、ISO/IEC 27017およびISO/IEC 27701の認証に基づく情報セキュリティ・プライバシー管理体制を整備しています。

特徴3:職員の運用とサービス改善を支える管理コンソール

AXは、住民向けの案内を効率化するだけでは完結しません。職員の業務そのものをAIを前提に組み直せるかが問われます。

運用の面では、シナリオ型のチャットボットのように想定問答を一つひとつ作り込む必要がありません。あらかじめ指定された情報ソースを参照して回答するため、元のページを更新すれば回答にも反映されます。参照先は自治体が指定したドメインに限定しており、範囲外のWebサイトをもとに回答することはありません。答える範囲を厳密に区切ることが、正確さと運用のしやすさの両方につながります。

改善の面では、職員向けの管理コンソールで、利用状況や住民から寄せられた質問の傾向、AIの回答内容とそれに対する住民の評価を確認できます。問い合わせ内容の分析や担当課の分類にも業務支援AIを活用します。住民がどのような情報を必要としているかをいち早く把握し、行政情報やFAQ、AIの回答品質の改善につなげられます。

住民のニーズを行政サービスの改善に生かす仕組みまで一体で提供することで、自治体のAXを支援します。AIに任せきりにせず、職員が確認・改善できる仕組みにより、行政のAIとして安全に育てていくことができます。

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