自治体の事務負担を軽減!介護保険証とマイナンバーカード一体化を徹底解説
介護保険証とマイナンバーカードを一体化し、マイナンバーカードのみで資格確認ができる仕組みの導入が進んでいます。2023年の健康保険法改正などを受けた動きで、自治体・介護事業所間の紙でのやり取りをオンライン化するのが狙いです。大分市などですでに運用が始まり、27年3月末までに約400、28年4月までに約9割の自治体で導入される見通しです。マイナ保険証を持つ加入者は追加手続きなしで利用でき、マイナポータルから自身の介護情報も確認可能になるなど、メリットは少なくありません。本記事ではこの「介護情報基盤」の仕組みと実務上の変化について解説します。

・関連記事:保険証12月2日廃止、マイナ免許証も来春登場! 要点を徹底解説(マイナ活用.com、2024年10月21日公開)
目次
介護情報を集約し紙・FAXから脱却
介護保険は市町村が保険者となり、65歳以上の住民(第1号被保険者)と医療保険(健康保険や国民健康保険など)に加入している40〜64歳の住民(第2号被保険者)が加入します。現在、要介護認定や資格確認、主治医意見書のやり取りなどに必要な情報は、自治体・介護事業所・医療機関がそれぞれ別々に管理し、郵送やFAXといった紙ベースの手段で共有しています。
このため、認定申請から結果が出るまでに書類が何度も行き来し、転記ミスや到着の遅れが生じることも珍しくありません。人手不足が深刻化する介護の現場にとって、この紙のやり取りは無視できない業務負担になっていました。
こうした課題を背景に、2023年の健康保険法改正などを受けて整備が進められているのが介護情報基盤です。
(介護情報基盤の概念図 = 介護情報基盤ポータルより)
要介護認定情報
介護保険証等情報(被保険者証・負担割合証・負担限度額認定証)
住宅改修費利用等情報
主治医意見書
ケアプラン情報
LIFE(科学的介護情報システム)情報の一部
これらの情報をオンライン上に集約し、保険者である自治体と介護事業所、医療機関、利用者本人が、それぞれ必要な範囲で情報を確認できるようにする仕組みです。紙でのやり取りの手間や負担がかかる作業が減る、1つの場に集約された情報をサービス間で共有する、申請・受信・確認などのフローがオンラインで完結するといったメリットがあります。
運用は2026年4月1日以降、システム改修などの準備が整った自治体から段階的に開始されており、厚生労働省は2年後の2028年4月までに全国の市町村の88.7%、被保険者数では73.2%(1545自治体、約2,627万人)が利用を開始すると見込んでいます。
・参考:厚生労働省|令和8年度第1回介護情報基盤に係る自治体説明会資料(2026年7月22日)
併せて進められているのが、マイナンバーカードと介護保険証の一体化です。マイナンバーカードを提示するだけで資格確認が完結する仕組みを整えることで、介護保険に関する手続き全体をデジタル前提へと作り替えていく狙いがあります。
マイナンバーカード活用で利用者は便利に
介護情報基盤の導入で、サービスを利用する本人や家族にとっても、手続きが簡素化されるメリットがあります。カギを握るのがマイナンバーカードです。
健康保険証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ保険証」を持つ利用者は追加の手続きなしで、マイナンバーカードの提示による資格確認が可能になります。介護事業所の窓口でマイナンバーカードを提示し、カードリーダーで読み取ってもらうだけで、被保険者資格や負担割合、負担限度額の確認が完了するのです。
これまでのように、介護保険証・負担割合証・負担限度額認定証といった複数の証書を持参する必要がなくなる点も、日々の利用における実務的な負担軽減につながります。介護保険証や各種書類を紛失するリスクも減るでしょう。
また、専用サイトであるマイナポータルから、自身の要介護認定の状況や介護保険証等の情報を確認できるようになる点も見逃せません(マイナ保険証と同様)。従来は自治体からの通知や窓口への問い合わせに頼っていた情報を、オンラインでいつでも把握できるようになります。介護保険証の保管場所が分からなくなったり、紛失によって再発行が必要になったりするケースが多かったことを踏まえると、書類の管理負担が軽くなる効果も期待されます。災害時や急な体調変化などで紙の保険証を持ち出せない場面でも、カード1枚でサービス利用にたどり着けることは安心材料になるに違いありません。
・参考:マイナポータル(デジタル庁)
なお、マイナンバーカードを持たない人への配慮から、紙の介護保険証の交付は当面継続される方針です(紙の健康保険証の新規発行は2024年12月で終了)。急な制度変更で不利益を被る利用者が出ないよう、移行は段階的に進められます。
自治体は事業所からの問い合わせ対応が減少へ
保険者である地方自治体にとっては、書類等の交付や要介護認定申請などに関する印刷・発行・郵送などの業務が軽減されます。さらに介護事業所や医療機関が必要な情報を自らオンラインで確認できるようになるため、問い合わせへの対応工数が削減されます。
ただ、既存システムの改修や新たな運用ルールへの対応が必要となります。特に、これまで被保険者(40歳以上の医療保険加入者)が65歳に到達した時に一律交付していた介護保険証は、今後は要介護認定の申請時に個別に交付する方式への切り替えが検討されています。対象者の抽出や住民への周知の手法のほか、窓口対応の変更など、実務面での準備が求められる項目は少なくありません。
前述のとおり、介護情報基盤はシステム改修などの準備が整った自治体から段階的に開始されています。このうち大分市と大分県別府市は先行実施事業に取り組んできた実績を生かし、全国に先駆けて2026年4月から運用を開始済みです。2026年10月からは鹿児島県指宿市と京都府京丹後市が利用を開始する予定で、11月には27市町村が名を連ねます(2026年9月10日時点の見通し)。
厚生労働省によると、2027年3月末までに393自治体*で導入が進み、本格運用開始となる2028年4月までには、自治体数ベースでおよそ9割が利用を開始する見込みとなっています。
*:厚生労働省が公表している2026年9月10日時点のデータを基に当社が集計
自治体にとっては、紙でのやり取りが減ることで窓口対応や照会業務の負担が軽くなるほか、住民からの「保険証を紛失した」「認定結果はいつ届くのか」といった問い合わせ対応の効率化も期待されるポイントです。限られた職員体制で介護保険業務を回している自治体ほど、この効率化のメリットは大きくなるでしょう。
ケアプラン策定の工数と時間が大幅減
主治医意見書を、システム上で作成・送信
医療機関にとって特に大きいのが、要介護認定の申請・更新に必要な主治医意見書を、システム上で作成・送信できるようになる点でしょう。これまでのように紙で作成して自治体へ郵送する必要がなくなり、書類の往復にかかっていた時間が削減されます。結果として、申請から認定結果が出るまでの期間短縮にもつながると見込まれています。
介護事業所側も、利用者の資格情報や認定情報をシステム上でスピーディーかつ適時に確認できるようになります。これにより、これまで自治体や利用者・家族への確認に費やしていた時間を大幅に短縮できます。
(従来の要介護認定の流れ|出所:介護情報基盤 コンセプト映像)
例えば、要介護認定に関してこれまでは、次のような流れで多大な手間と時間がかかっていました(上図)。
市町村は手続きの進捗に関する問い合わせに電話で対応
医療機関は主治医意見書を郵送
介護事業所は利用者の自宅で結果を確認
それが、介護情報基盤への移行により、全てオンラインで対応可能になります(下図。出所は同上)
本来のケア業務や対話に集中
特にケアマネジャーにとっては、必要な情報がそろうまでのタイムラグが減ることで、ケアプラン(介護サービス計画書)の作成をより迅速に進められるようになる点が実務上の大きな利点です。認定結果や主治医意見書の到着を待って作業が滞る、といった従来のボトルネックが解消に向かうと期待されます。
限られた人員で運営せざるを得ない介護現場にとって、こうした事務負担の軽減は、書類確認や問い合わせ対応に割いていた時間を、本来のケア業務や利用者との対話に充てられるようになることを意味します。
制度としての効率化が、現場の人手不足対策としても機能しうる点が、医療機関・介護事業所双方にとっての実質的なメリットといえるでしょう。
カードリーダーやシステム対応に補助制度
医療機関と介護事業所が介護情報基盤の利用を始めるには、マイナンバーカードのICチップを読み取るためのカードリーダーの購入や、主治医意見書をオンライン資格確認等システムに接続する回線、電子カルテや文書作成ソフトの改修などが必要になります。
国はこれらにかかる経費の一部を補助する制度を設けており、2026年度(令和8年度)は2027年3月12日まで申請を受け付けます。
・参考:厚生労働省|令和8年度第1回介護情報基盤に係る自治体説明会資料のP.23(2026年7月22日)
大分市では地域包括ケアの質を高める土台に
介護情報基盤ポータルの公式チャンネルでは、大分市の事例が紹介されています(取材:2025年12月)。行政、医療機関、介護事業所それぞれの現場から「郵送の手間が減った」「支援状況をデータとして把握しやすくなった」などの声が上がっています。
・参考:
(2026年1月公開)
◆行政の視点(大分市)
全国に先駆けて介護情報基盤を導入した自治体として、マイナンバーカードによる介護保険証等情報の確認や、主治医意見書のオンラインでのやり取りの導入プロセスについて語られています。
◆医療機関の視点(大分三愛メディカルセンター、大東よつば病院)
主治医意見書を紙で作成・郵送していた従来の運用から、オンラインでの送付に切り替えたことで、郵送にかかっていた手間や時間が減ったという実感が述べられています。
◆介護事業所の視点(わさだケアセンター、大東リハビリテーションセンターもみの木)
利用者やその家族への支援状況について、これまで現場の感覚に頼っていた部分を、業務データとして可視化・把握しやすくなったという変化が紹介されています。
それぞれの現場でのデジタル化が、書類のやり取りにかかる時間の削減にとどまらず、利用者本位の地域包括ケアの質を高める土台になっていることが窺えます。
自治体と事業者のDXを支援するポケットサイン
介護情報基盤の整備は自治体、医療機関、介護事業所それぞれの実務を効率化すると同時に、住民側(被保険者)にとっても、マイナンバーカードを用いてマイナポータルにアクセスすれば好きなタイミングで自身の介護情報を確認できるという利点があります。
マイナンバーカードは今後ますます私たちの日常生活に浸透し、無くてはならないものになっていきます。そして、地方自治体でも民間企業においても、マイナンバーカードとスマートフォンを掛け合わせた様々なサービスが、マイナンバーカードの普及促進と利便性向上には欠かせません。
ポケットサイン株式会社はマイナンバーカードの普及促進と活用拡大に注力しており、自治体や民間企業との積極的な協業・DXの支援を推進しています。当社が開発するスマホ用スーパーアプリ「ポケットサイン」は、あらゆる種類のミニアプリを実装することができ、全国の自治体や企業に活用していただいています。
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マーケティングチーム
南 昇平
新聞記者、Saasスタートアップ広報を経て大手IT企業広報。マイナンバーカードやJPKIに関するニュースを分かりやすくお伝えします。







