自治体のAI窓口とは?住民向け問い合わせ対応へのAI活用と事例を解説
人口減少や人手不足が進むなか、自治体には限られた職員数で住民サービスを維持・向上させることが求められています。2026年7月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも、AIの徹底活用とAX/DXの推進方針が示されました。
こうしたなか、住民からの問い合わせ対応や情報案内にAIを活用する「AI窓口」が注目されています。本記事では、Webサイトや公式アプリを通じた住民向けデジタル窓口に焦点を当て、仕組みや導入時の課題、活用事例を解説します。
自治体の「AI窓口」とは?従来のチャットボットとの違い
自治体の「AI窓口」は、住民からの問い合わせにAIが応答する仕組みを指す言葉です。明確な法令上の定義はなく、報道や事業者によって対象範囲が異なります。
庁舎の案内端末、電話応対、Web上のチャットボットなど、形態はさまざまです。本記事では、自治体のWebサイトや公式アプリ上で、住民からの質問に回答するデジタル窓口を取り上げます。
シナリオ型と生成AI型の違い
従来のAIチャットボットは「シナリオ型」が主流でした。あらかじめ想定問答を作り込み、選択肢や決められた言い回しに沿って回答する方式です。想定した質問には正確に答えられる一方、作り込みと更新に職員の工数がかかります。
生成AI型は、指定された情報源を検索したうえで文章を組み立てて回答します。想定問答を一つひとつ用意する必要がなく、参照元のページを更新すれば回答にも反映されます。近年注目されているのはこの生成AI型です。
なお、AIの導入手順や検討の進め方については、総務省がガイドブックを公開しています。
参考:総務省|自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)
自治体のAI活用の現在地|導入率と用途の内訳

自治体のAI活用は、導入するかどうかの段階をすでに越えています。ただし現在の使われ方は、住民向けよりも庁内業務に偏っているのが実情です。
総務省の調査によると、2025年10月31日時点でAIを導入済みの団体は、都道府県98%、指定都市100%、その他の市区町村62%でした(※この調査の「AI」は生成AIを含みません。生成AIは別調査です)。生成AIに限ると、都道府県と指定都市はいずれも100%、その他の市区町村は45.6%です。生成AIについては、実証実験中・導入予定・導入検討中を含めると、その他の市区町村でも約88%が導入に向けて動いています。
引用参考:
総務省|自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)(2026年4月24日版)
総務省|自治体における生成AI導入状況(令和7年度)(2026年4月24日版)
用途の上位は、いずれも職員の文書作成
同じ調査で示された生成AIの利用用途は、上位5件が次のとおりです。
あいさつ文案の作成:1,292件
議事録の要約:1,131件
議会の想定問答の文案の作成:1,085件
メール文案の作成:1,052件
企画書案の作成:997件
いずれも職員が扱う文書の作成・要約であり、住民が直接使うものではありません。生成AI以外のAI機能でも、導入件数の上位は音声認識967件、文字認識(AI-OCR等)629件で(AI・RPA活用促進 令和7年度)、いずれも職員の入力・記録業務を支える用途です。
つまり、自治体のAI活用は「庁内の業務効率化」から広がってきました。住民が自ら使う窓口としての活用は、これから本格化する領域だといえます。
最大の課題は「回答をどこまで信用できるか」
総務省が2026年4月24日に公表した「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」では、導入・活用にあたっての課題として最も多く挙げられたのが「AI生成物の正確性への懸念がある」で、608件にのぼりました。導入するかどうかではなく、出てきた答えをどこまで信用できるかが論点に移っているということです。
この懸念は、住民向けのAI窓口でさらに重くなります。行政情報は制度の適用可否に関わるため、誤った案内が住民の不利益につながるからです。後述する導入時の論点も、この一点に集約されていきます。
なぜ住民向けの「AI窓口」に広がってきたのか
庁内向けから住民向けへと関心が移ってきた背景には、現場の事情と国の方針の両方があります。
住民向けAI窓口が求められる背景の一つが、自治体の人手不足です。職員数が限られるなかで、問い合わせ対応と行政情報の整理・更新は継続的な負担になります。一方の住民側も、掲載情報が増えるほど探すコストが上がります。探す側と届ける側の双方に負担が生じているという構図です。
国の方針としては、2026年7月21日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。AIを前提に業務のあり方を見直す「AX(AIトランスフォーメーション)」を打ち出した計画です。同計画は、AIエージェントが個人の意思に基づき必要な情報を自律的に取得・提案する姿を将来像として描いています。住民との接点にAIを置く取り組みは、この方向性の入り口に位置づけられます。
参考:デジタル庁|デジタル社会の実現に向けた重点計画(2026年7月21日閣議決定)
AXの定義や重点計画のロードマップについては、別記事で詳しく解説しています。
▼AXについての記事はこちら
AXとは?DXとの違いから、行政・自治体で始まるAI活用について解説
従来のAI窓口が抱える3つの限界
住民向けにAI窓口を用意しても、期待した効果が出ないことがあります。運用が続かない、住民に使われない、職員が結局フォローに回るといった状態です。要因は大きく3つに整理できます。
【課題1】想定問答の作り込みによる「運用の負担」
シナリオ型のチャットボットは、質問と回答の組み合わせを事前に用意する必要があります。制度改正や年度替わりのたびに、担当課が内容を点検して更新しなければなりません。
導入時は関係課の協力を得て問答を整備できても、運用が続くほど更新は後回しになりがちです。回答が古いまま残れば、住民の信頼を損ないます。想定していない質問には答えられないという制約も残ります。
【課題2】相手の属性が分からないことによる「一般論しか返せない」
一般的なAIチャットは、質問している人が誰なのかを知りません。そのため回答はどうしても一般論になります。
行政サービスでは、これが決定的な弱点になります。使える制度は住んでいる市区町村によって異なり、年齢や世帯の状況によっても変わるためです。住民が知りたいのは「自分は何を使えるのか」ですが、属性を把握していないAIはそこに答えられません。
利用者に居住地や年代を毎回入力してもらう方法もありますが、入力内容が正しい保証はありません。
【課題3】回答根拠が見えないことによる「正確性への不安」
生成AIは、参照範囲を限定しなければ出所の不確かな情報をもとに回答することがあります。回答だけが表示され、どの情報に基づいているのか分からなければ、住民は内容を確かめようがありません。
前章で見たとおり、自治体が生成AIの課題として最も多く挙げているのが「AI生成物の正確性への懸念」です。住民向けに公開するとなれば、この懸念はそのまま導入判断のハードルになります。回答の根拠を示せるかどうかが、住民向けAI窓口の実現可否を分けます。
本人確認と連動させると何が変わるのか
課題2で挙げた「一般論しか返せない」という制約に対する現実的な答えが、本人確認との連動です。
その基盤となるのが、マイナンバーカードを使った公的個人認証サービス(JPKI = Japanese Public Key Infrastructure)です。以降「JPKI」と表記します。JPKIは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を用いて、オンラインで本人であることを確認できる公的な仕組みです。
本人確認を経ることで、居住している市区町村や年代といった属性を、確認済みの情報として扱えるようになります。住民が毎回条件を入力し直さなくても、自分に関係する制度や手続きを調べられる体験が成立します。「子育て支援について教えてください」という同じ質問に対し、その人が実際に使える制度を案内できるということです。
ここで必要なのは「その人が誰か」を特定することではありません。「どの市区町村に住む何歳代の人か」という、個人を特定できない形に変換した属性情報があれば、案内の個別最適化は成り立ちます。
なお、「マイナンバー」(12桁の番号)と「マイナンバーカード」は別のものです。JPKIによる本人確認は電子証明書を用いる仕組みであり、マイナンバーそのものを使うわけではありません。
▼公的個人認証サービス(JPKI)についての記事はこちら
公的個人認証サービス(JPKI)とは|マイナンバーカードを活用した本人確認の未来
AI窓口の導入時に確認したい4つの論点
住民向けのAI窓口を検討する際、事業者を比較する軸になるのが次の4点です。いずれも前章までに挙げた課題に対応しています。
論点1:回答の正確性をどう担保するか
根拠となる情報が足りないときに、AIが無理に回答を生成しない設計になっているかを確認します。関連情報や問い合わせ先の案内に切り替える仕組みがあれば、誤った案内のリスクを抑えられます。
論点2:参照する情報源の範囲を限定できるか
回答の参照先を、自治体が指定したドメインや公開情報に限定できるかどうかは重要な確認項目です。範囲外のWebサイトを参照すれば、行政として説明できない回答が生まれる可能性があります。答える範囲を厳密に区切ることが、正確さと運用のしやすさの両方につながります。
論点3:回答の根拠を利用者に示せるか
回答とあわせて、根拠となったWebページを表示できるかを確認します。利用者が自分で内容を確かめられれば、AIの回答をそのまま信じるかどうかを判断できます。職員が問い合わせを受けた際の確認もしやすくなります。
論点4:運用と改善を職員が回せるか
導入後に、質問の傾向やAIの回答内容を職員が確認できる仕組みがあるかを見ます。住民がどのような情報を必要としているかが分かれば、Webサイトの構成やFAQの見直しにも生かせます。AI窓口は入れて終わりではなく、行政情報そのものを改善する材料が集まる場所でもあります。
【住民向けAI窓口】宮城県|マイナンバーカード連携で案内を個別最適化する「AIみやぎ県」

住民向けにAI窓口を展開している例として、宮城県の取り組みを紹介します。実施主体は宮城県で、当社がサービスを提供しています。
宮城県は2026年9月2日から、みやぎ県民公式アプリ「ポケットサイン」内のミニアプリとして「AIみやぎ県」の提供を開始しました。県民からの質問に対し、県が公開している行政情報をもとにAIが回答する仕組みです。マイナンバーカードによる本人確認と連動し、利用者の属性に応じて回答を最適化します。
現段階は実証実験です。村井嘉浩知事は同日の記者会見で「本日から『実証スタート』として、AIみやぎ県の提供を開始いたします。まだしばらくは実証実験です」と述べています。県は質問の受付を「県民公式アプリ」と「観光情報」の2分野から始め、2027年1月からの本格提供を予定しています。
背景にあるのが、県民とのデジタル接点の広さです。みやぎ県民公式アプリ「ポケットサイン」には、県民の2人に1人にあたる120万人超が登録しています(2026年9月2日 当社発表時点)。すでに使われているアプリの中にAI窓口を置くことで、新たなアプリの導入を求めずに県民が利用できる形になっています。
参考:
宮城県|宮城県知事記者会見(令和8年9月2日)
ポケットサイン株式会社|ポケットサイン、全国初※の「マイナンバーカード(JPKI)×生成AI」で住民向け行政窓口サービスを提供開始(2026年9月2日)
住民向けのAI窓口なら「ポケットサインAI窓口」

前章の「AIみやぎ県」を支えているのが、ポケットサイン株式会社が提供する自治体向けAI窓口サービス「ポケットサインAI窓口」です。住民向けの利用窓口と、自治体職員向けの管理コンソールで構成されます。
マイナンバーカードのJPKIによる本人確認と連動し、利用者の属性に応じて回答を最適化する住民向け生成AIサービスとしては、全国初の取り組みです(※2026年8月時点、当社調べ)。
特徴1:本人確認と連動し、一人ひとりに合った案内を実現
マイナンバーカードによる本人確認を起点に、市区町村や年代などの属性に応じた回答を提供します。利用者が毎回条件を入力し直す必要はありません。
対話の内容を必要な範囲で記憶する「メモリ機能」も備えています。質問を重ねるほど、その人の関心や状況を踏まえた案内に近づいていきます。
なお、本人確認を経て取得した氏名・住所・生年月日・性別が、そのまま生成AIに渡ることはありません。生成AIが受け取るのは「〇〇市にお住まいの30代の方」のように、個人を特定できない形に変換した情報だけです。マイナンバー(個人番号)は取得・利用していません。
特徴2:参照範囲を限定し、根拠を示す安全設計
回答の参照先は、自治体が指定したドメインに限定しています。範囲外のWebサイトの情報をもとに回答することはありません。
回答には、根拠となったWebページなどの情報源をあわせて表示します。利用者は、答えのもとになった行政情報を自分で確認できます。根拠となる情報が十分にない場合は、無理に回答を生成せず、誤った情報の案内を抑制します。
あわせて、不適切な質問やサービスと関係のないメッセージを検知して回答を行わない「入口ガード機能」を備えています。
特徴3:職員の運用と改善を支える管理コンソール
シナリオ型のチャットボットと異なり、想定問答を一つひとつ作り込む必要はありません。指定された情報ソースを参照して回答するため、元のページを更新すれば回答にも反映されます。

職員向けの管理コンソールでは、住民から寄せられた質問の傾向、AIの回答内容とそれに対する住民の評価を確認できます。問い合わせ内容の分析や担当課の分類にも業務支援AIを活用します。住民が必要としている情報を把握し、行政情報やFAQ、AIの回答品質の改善につなげられます。
当社は、公的個人認証サービスにおけるプラットフォーム事業者として主務大臣の認定を受けており、宮城県をはじめとする自治体でJPKIを実装・運用してきました。中核となる技術については特許を取得しています(特許第7880510号)。
▼「ポケットサインAI窓口」についてはこちら
https://pocketsign.co.jp/gov/ai-madoguchi
AX時代の行政サービスなら「ポケットサイン」
当社は今後、マイナンバーカードのJPKIと生成AIを組み合わせ、行政手続きの申請支援や、ライフサイクルや興味関心に応じたプッシュ型の行政案内など、自治体と住民のさまざまな接点を担うAIサービスを順次展開していく方針です。
その第一歩となるのが、住民の相談・案内を支援する自治体向けAI窓口サービス「ポケットサインAI窓口」です。JPKIによる本人確認と連動し、利用者の属性に応じて回答を最適化する住民向け生成AIサービスとしては、全国初の取り組みとなります(2026年8月時点、当社調べ)。
既存の行政サービスにAIチャットを追加するだけのものではありません。住民が行政情報を探す体験と、自治体が住民のニーズを把握して情報やサービスを改善する業務を、AIを前提に再設計していく取り組みです。

▼関連情報・カタログ
自治体の方へ:https://pocketsign.co.jp/gov
サービス資料ダウンロード(自治体向け):https://pocketsign.co.jp/contact/download/government
自治体向けに無料トライアル実施中
ポケットサイン株式会社はマイナンバーカードの普及促進と活用拡大に注力しており、自治体や民間企業との積極的な協業・DXの支援を推進しています。住民からの問い合わせ対応や行政情報の届け方でお悩みの際は、マイナンバーカードを活用した実践的なソリューションをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
▼問い合わせはこちらから
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▼ポケットサインについてはこちら
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マーケティングチーム
中西 健太
ポケットサイン株式会社のマーケティング担当として、マイナ活用.comのコンテンツ制作などに従事しています。








